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女装巫女奇譚  作者: 3608
女装巫女・爆誕
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序章

 冷良は人間の父と雪女の母を持つ半妖の男である。

 この短く自然で面白味に欠けた紹介文句に、決して無視し得ない違和感が一つ。

 そう、半分とはいえ雪『女』であるのに男とはこれ如何に。

 特徴を考えれば雪ん子、あるいは雪童子と呼ぶべきなのかもしれないが、残念ながらそれらと雪女は起源が異なる別の種族だ。

 つまり、冷良は紛れもなく雪女の半妖で、男なのである。そこにいくら違和感を覚えたとしても意味はない。神たる英知を持たぬ人の身に出来るのは、生命の神秘とは斯くも摩訶不思議なのだと驚くのみだ。

 さて、このように小難しいことを並べはしたが、実の所本人にとっては大した問題ではない。血縁がどうであれ男なのだから、普通に男として育った。

 男であるのだから、世間の男子と同じく御伽噺の英雄に憧れたりもする。有名どころである須佐之男命の八岐大蛇退治は当たり前として、建御雷神神と建御名方神の激闘や、大国主命の王となるまでの立身譚などなど、話の種に困ることはない。近所の子供たちとごっこ遊びの題材にしたことは数知れず、丁度良い長さの枝を見つければ嬉々として振り回し、最後は大人に怒られるまでがお約束。

 当然、胸に抱く理想は腕っぷしで悪を絶ち弱者を守る『恰好良い男』だ。身近なところでは国を守る侍が一番近いか。

 だというのに。


「本日より新しい巫女として働く冷良です。皆、先達としてしっかりと仕事を教え込むように」


 巫女――神に仕える女性を指す単語だ。こちらは種族ではなく職業なので、摩訶不思議な神秘によって男の巫女が誕生したりはしない。

 そんな巫女として紹介された冷良は、女だらけ(・・・・)の視線に引き攣った愛想笑いを返しながらも、既に何度も繰り返した自問をせずにはいられなかった。

 ――どうしてこうなった。


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