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第2話「案内文」


「青春再取得プログラムのご案内・・・」


 聞き馴染みのない言葉だ。怪しげなセールスかサービスの案内だろうと思いつつも最後まで読んでみることにした。

 


 「※本プログラムは一部の対象者の方のみに送付を行っております。本プログラムについて、宛先人以外への口外は固く禁じます。情報漏洩が確認された場合には、適切な対応を取らせていただきますので、ご留意ください。」



 冒頭から物騒な注意書きで始まっている。一部の対象者のみ・・・俺は対象者に選ばれたということか。

 「選ばれました」とか「当選しました」といった文言は詐欺の常套句だ。警戒心を強めつつも、読み進める。




「あなたの青春時代には、どんな思い出がありますか?

 

 放課後の教室での雑談、友人と汗を流す部活動、クラスで一丸となって取り組む文化祭・体育祭・同級生からのラブレター・・・。

 

 本プログラムは、そんな青春ドラマや学園アニメのような青春を体験することができるプログラムです。

 我々の開発した独自技術に基づき、現実とほとんど変わらないリアルな体験を提供いたします。

 どんな青春時代を過ごすかは参加者本人次第ですが、充実した青春時代を体験できることを保証いたします。

 

 本プログラムは国家プロジェクトの一環であり、重要な研究実験の一環として実施されるため、参加費は無償とさせていただきます。ただし、体験内容についてはすべて記録の上、研究に活用させていただきます。


 具体的なプログラム内容は、情報漏洩のリスクを避けるため、下記の説明会にて説明いたします。

 説明会に欠席した場合は不参加とみなしますので、参加に少しでも興味のある方は、ぜひ説明会にご出席をお願いいたします。


 **************************************************



                    青春再取得プログラム説明会


 

・集合場所・・・東京都XX市XX X-X-X ○○駅西口(駅から研究所までシャトルバスで送迎いたします)

・集合日時・・・20XX年XX月XX日(土) AM10:00

・持参物・・・身分証明書




**************************************************







 案内はここまでで終わっていた。

 やはりタイトルの通り、青春を体験できる、というプログラムらしい。体験方法はほぼ不明・・・説明会に行かないとほとんどの情報は分からないようだ。

 ただ、参加費は無償。国家プロジェクトの実験として行われているということだ。

 

 口外禁止というところや、国家プロジェクトとか、研究機構を名乗っているところからしてもかなり大きなプログラムらしい。詐欺だったとして、こんな大それた詐欺があるのだろうか。説明会に参加すると、実は法外な参加費を要求されるのだろうか・・・。



「怪しすぎる・・・。けど、現実と変わらない青春体験ができる・・・。」



 正直、プログラム内容には惹かれるものがあった。本当に青春時代を体験できるというならば、お金を払ってでも参加したいものだ。

 青春ドラマのような体験・・・まさに俺が求めているものだった。この案内が俺に届いたというのは、意図的に対象者に選ばれたのか、偶然選ばれたのか。いずれにせよ、運命的なチャンスにしか思えなかった。

 青春を再取得する・・・何年も俺が望み続けてきた、叶わない夢そのものだった。

 

 体験方法は不明だが、VRとかそういう類のものだろうか。何にせよ、現実感があると言うなら悪くはなさそうだ。

 身体への負担やリスクもあるのかもしれないが、いずれにせよ説明会に参加しないと分からない。



「・・・・・。」



 しばらく考えた末で、俺は結論を出した。




「・・・とりあえず行ってみるか。」




 話を聞かなければ虚偽もわからない。もし本当に青春を体験できるプログラムだとしたら、千載一遇のチャンスを逃してしまうことになる。

 行った先で捕らえられて怪しげなビジネスや犯罪に巻き込まれる・・・ということもあり得るが、まあいざとなったら逃げればいいだろう。



 

 改めて確認すると、集合場所は都内だが、23区外のかなりの田舎のようだ。行ったこともないが、駅からシャトルバス送迎ということなので、問題はないだろう。

 日時は次の土曜日の10時。持参物は身分証明書。特に大した身支度なしで行けそうだ。


 

 その日はその後、すぐに眠りについた。

 

 いつもの夢は見なかった。青春を再び体験できるという安堵感があったのかもしれない。

 想像の景色でしかなかった青春時代の鮮やかな夢が、自分の体験に基づく思い出の1ページとして夢に現れるようになることを、俺は願っていた。




 そして土曜日、俺は電車に乗って集合場所の○○駅西口に向かった。





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