シュナイダー
この世界の常識はわからないので適当にぼやかしながら農夫たちの質問に答える。
遠い国からさらわれてきた。
ここがどこかもわからない。
はぐれた友人を探している。
アドリブでそう説明したけれど、あながち嘘ではない。
本名そのまま「シュン・アイダ」と名乗ったのだけど、いつのまにか「シュナイダー」ということにされていた。
まあ、いいか……。
親切な農家に拾われたのは幸いだった。
そうでもなければ野垂れ死んでいただろう。
もし今ここを発つとしても路銀がないし、この世界の知識もない。
しばらくここでお世話になって準備を整えなければ……。
「あの……」
僕がおずおずと言葉を濁すと、おばさんは分かっていたように答えた。
「路銀がほしいのなら、2月ほど手伝っておくれ。そうしたら100グラベル金貨を10枚都合しよう。」
キャベツ1玉が市場で1グラベルだというから、それだけあればしばらく食いつなげそうだ。
こうして僕はここに留まることになった。
ディファイド公国南東に位置するというのどかな農村アイディリックハム。
特になんのイベントも発生していないので、ひとまず路銀をためて姫宮さんたちを探す旅に出なければならない。