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万能戦艦イリスヨナ / 愛しのイリス様のためなら古代戦艦だって総て滅ぼすことができる【百合】 / 愛しい我が巫女姫のために艦隊作るよ  作者: MNukazawa
人造艦船のつくるミライ / ヨナの望む臨終 / 機動辺境王都カサンドラ / VS円盤海獣
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巨大円盤海獣の被害 / 結晶化現象

グランツ家からの提案については、保留。


「出港までにはご返事します。長くても3日ほどでしょうか」


早ければ明日にはイリス様がお目覚めになる。

返事は即決でYESなのだけれど、すべては、イリス様にお許しを頂いてから。

エーリカ様の紹介でもあり、レインは警戒していたけれど魅力的な販路で、私としては断る理由がない。


仮に断れば、グランツ家は面倒な敵になる可能性もある。

グランツ家のほうには、イリス伯家の肝入り事業を、脅かすつもりはないかもしれないが。


「とはいえ、出港させてもらえるかどうかはわからないところもありますが」

「魔槍を輸送中に行った戦闘であれば、責任の所在は第五皇女様になるでしょう。被害の保障もエーリカ様と第五皇女様が引き受けられるかと」


(いいのかなぁ。)


到着地点の安全確保と、言い訳はつけられるけれど。

厳密には、しなくていい戦いに勝手に首を突っ込んだわけで、むしろ余計なことをしたと叱責されても仕方ない。


「そういうことになりますか」

「ええ。今後のためにも、必ずそうなります。イリス伯に責任を押し付けたりすれば、だれも護送などしてくれなくなる。

またグランツ家としても、そうなるよう微力ながらお力添えします」


今後を見据えて、恩を売ってくれるつもりらしい。


「ありがとうございます」


こちらとしては助かる話なので、受け取っておく。


「街の被害状況について、まだ詳しく知らないのですが、どうなっているかご存知ですか?」


私が知っているのはレインが話の端々から拾ってきた情報で、まだ第二報くらいの粒度だった。


「水晶宮から脱落した船による被害が気になっているのですが」


それは私がやったことだ。


「中央区において唯一の犠牲ですね。水晶宮が目立つのと、周りが無傷なのと合わせて、見た目には派手ですが被害はそれほどではない」


グランツ氏は深刻すぎず、しかし悼む口調で答えた。


「死者は10名程度だろうと」

「そうですか」

「被害と犠牲は、あの海獣が上陸した西区が、こちらは見た目以上にひどい。

西区の住民のほとんど、王都の人工の2割が犠牲になったのではないかと言われています」


それは私が思っていたよりずっと多い。


「犠牲は、海獣が壊した範囲だけではないのです」

「最後の雷撃で周囲に被害がありましたか」

「いいえ。海獣が崩壊する寸前、発光した際に、周囲の生物がすべて結晶に変化して死んだと」


----


グランツ氏との会談のあと、積もる話のあるだろう掌砲長より少しだけ先にイリスヨナに戻る。


お目覚めになっていたイリス様に、会議室で状況を説明。

ついでに、グランツ家との協力関係についてOKを頂く。


現地の教会施設へ打ち合わせに出ていたレインの帰還を待つ。

戻ってきたレインも、向こうで結晶化現象の情報を得ていた。


さらに、追加の新情報として、結晶の正体は塩であるという。


「教会施設は王都の中央部にあって被害を免れました」


会議室の机の上に、もらってきたというA3くらいの王都の地図を広げる。


「巨大海獣が崩壊した瞬間、発光した光が届いた範囲が塩化現象にみまわれています。

西区は確かに全滅に等しい甚大な被害を受けていますが、ある意味で不幸中の幸いでした。

王都の中央部で炸裂していたらどうなっていたかと、王都カサンドラの首脳部は震えています。

あの円盤海獣が自爆するのかどうかはわかりませんが」


巨大海獣自体は普通のエビの見た目だったが、頭上の円盤は明らかに人工物だった。自爆というのもありえなくはないかも。

地図上に塗りつぶしでプロットされている被害範囲は、巨大な何かに遮られるかのように、王都の中央部が被害を免れている。


「被害半径が扇状になっているこれは?」

「そこが私たちにとっては大問題です。被害範囲が海面のイリスヨナを避けています」


レインが指で示したのは、港湾近くの点。攻撃の瞬間イリスヨナが存在していた場所。

しかし、イリスヨナはそれなりに大きい船だが、影ができるほど背が高いわけではない。

被害を免れた範囲も、イリスヨナ周辺は直線の影というより球状に見える。


「状況は、意図せず王都を庇う形になっていますが、同時に、謎の塩化現象に抗する術をイリスヨナが持っているように見えます」

「まるで私たちが犯人かのように?」

「決めつけられはしませんが、そう見えなくもないです」


もっともな話だった。

私自身、塩化現象はイリスヨナによるものではないかと一瞬疑うが、攻撃に使ったメーザ誘導TCシステムにはそういう効果はない。

また、謎の古代戦艦とはいえ、イリスヨナがそういう遠隔の塩化攻撃を持っているとは考えづらい。


「塩化現象に対する耐性、何か心当たりあります?」


私は首を振る。副長とイリス様も同じく。


「これだと、私たちが何も弁解しないまま、すぐに出港するのは無理かしら」

「いえ、今回の出来事は新兵器による魔槍アロン輸送の妨害とも考えられます。

第五皇女様に直接事情を説明するという名目で、イリスヨナには帰還命令が出ます」


なんにせよ、カサンドラ単体で処理できる問題ではありません、とレイン。


「イリスヨナからカサンドラへは、輸送中の機密保持のためすぐには説明に伺えないという詫びを、イリス家の名前で入れておくのが良いかと思いますが」


レインは私とイリス様を見て、提案。

私とイリス様としては反対する理由もない。


「では教会を通してそのように。

少ないですが、教会のツテでグランツ家を通して購入した物資が3時間後に届きます。それを積み込んだ頃には出港できるでしょう」

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