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VS激突! 牽引爆雷<あくありうむ>3

艦間有線が輻輳を起こしながら低周波をがなり立て、各艦発令所上の檣で光信号が忙しなく瞬く。


各部署伝えられた『封印解除』の命令を受け、各海防艦が艦尾を覆い隠していた幌布を脱ぎ捨てる。

原典艦から後部砲塔を廃した漁業甲板には、巨大な補助ブースタに見える胴太な筒。


『択捉<えとろふ>』を含む海防艦の艦尾に、左右2条の海中投下レールが斜めに立ち上がっていく。

空に向けて屹立すると、胴太な対空ミサイルを裸で運用しているような外観。


『桜花』を逆向きにしたような、エンテの曳航潜水艇。

その頭頂から伸びる牽引索。


海防艦『平戸<ひらと>』後部甲板から搭乗員が乗り込む。


「気密チェックは必ず実施しろ。省略は許されていない」


班長の言葉に搭乗員がうなずくのを確認して、キャノピィを閉じる。


手抜きと疑うほど直線的な円筒形の機体に、そこだけ滑らかな形状のキャノピィは、ほとんど胴体から飛び出している。


潜水艇にあるまじきバブルキャノピィな操縦席は『桜花』そのまま。

ファストバックな『桃音』飛行機よりも広い後方視野を、搭乗員に与える。


チェックを終えた搭乗員が手信号で合図したのを確認すると、後部甲板員たちが固定螺栓を解除。


「<あくありうむふぁいぶ>! 搭乗よろし!」

「<えんとりぃ>!」

「投下!」

「落とせ落とせ落とせ!」


ミサイル発射とは逆、スロープを下って半回転しながら後部から着水しての出撃。

潜水艇はしばらくキャノピィを水面に浮かべた状態で通電と水密の確認をすると、牽引索で曳航されたまま水面下に消えた。


潜航を肉眼で確認したことを、旗艦『択捉<えとろふ>』へ伝える。


----


『『平戸<ひらと>』より入電。ア5号投下。』


『『択捉<えとろふ>』より<あくありうむふぁいぶ>、海中状況、知らせ」

『こちら先行する有人<あくありうむふぁいぶ>、海中状況はクリア。微震があるものの進路に障害物なし。水流も安定。水温躍層の存在は確認できず』

『『択捉<えとろふ>』了解。引き続き観測を続けてくれ』


「提督、『釣り作戦』いけます」


スイはうなずいて一言。


「始めてください」

「作戦開始!」


『艦首より艦尾。胎盤運用班、攻撃型<あくありうむ>2機投下せよ』

『胎盤班了解。<あくありうむ>投下プロトコル始動します!』


予備戦力から主攻に切り替わった『択捉<えとろふ>』の艦尾に、左右2条の海中レールが斜めに立ち、潜水艇が空に向けて屹立している。


『択捉<えとろふ>』艦尾甲板に艤装された潜水艇は他と違い、操縦席がキャノピィごと無かった。


『こちら艦尾甲板より胎盤班。操演班よいか?』

『発令所操演班、配置についた。操演確認頼む』


『配置についた』


潜水艇の尾部にある潜舵がゆっくりと頭を垂れる。


『潜舵、下30度稼働を目視で確認』


そうして艦内有線越しに舵の動きを確認していく。


『操舵確認完了。続けて速度計回せ』


「「「回せ、回せ、回せ」」」


『ーー給水発電機の発振を確認した』


後部甲板員が複数人でとりついて、潜水艇の胴体後方にある円周上の回転部フィンを手回し。


『胎盤班に感謝する。投下開始』

『操演班の操挺に期待する。機体を投下する』


「背面投下!」

「<ばっくろーるえんとりぃ>!」

「<あくありうむ>2機、状況開始」


----


脇には改造された漁網巻き上げ機こと<胎盤>が、海中へ通電牽引索をリリースし続けている。


イリス漁業連合が原典艦を採っている大日本帝国海軍では、軽巡洋艦『北上』が回天搭載母艦となっていた。

その実績からいえば、おおむね100m超え船体であれば、イリス漁業連合『<あくありうむ>』Class潜水艇の母艦には足りるといえる。


そしてイリス漁業連合所属の海防艦『択捉<えとろふ>』は漁船。


船足はトロくとも、海中で網を引き、船体外まで海産を満杯にした状態で母港に引っ張って戻れる牽引力がある。

実際、漁港で網を引き上げたら船体容積の2倍あった日も少なくない。


魚雷の風体をした20t物体を牽引するのは、海防艦『択捉<えとろふ>』にとって苦労ではなかった。

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