イリス漁業連合遠征艦隊、特別輸送業務(皇都爆撃作戦)発動
古代戦艦イリスヨナに随伴しているのは『前龍驤<ぜんりゅうじょう>』のみ。
フーカとスイは艦隊と共に聖竜皇国の国境線上にあり、古代戦艦イリスヨナの出力であれば無線が通じる位置に陣取っている。
イリスヨナに帰還したレインが、魔術専門家としての上空の魔法陣について解説を試みる。
「何らかの大規模な召喚魔術です」
『なら話は簡単だわ。チセはおそらく儀式の中心にいる。いなくても儀式をブチ壊せば積極的に殺害する理由がなくなる』
フーカによる総括は雑かつ暴力的なものだった。
レインはすでに走り出した状況で、それでも意見を入れてくれる。
「いちおう言わせていただきますが、ここで逃げておけば問題は解決しますよ。
聖竜皇国の狙いは大規模召喚魔術による禁じられた神獣召喚でしょうから、禁じている大国アルセイアとの戦争になります。
イリス漁業連合にかまける暇はありません」
レインの言葉に応えたのはイリス様だった。
「レイン、ありがとう。私はチセを助けたいのです」
何か応えようとしたレインが、イリス様が発言した事自体に驚いた様子で、言葉に詰まる。
提督であるスイが、まるで事前準備が終っていたかのように言う。
『えっと。
イリス様、遠征艦隊提督スイより、『要人救出、召喚魔術の阻止を目的として、任意ターゲット上空へ爆弾輸送および投棄を行う作戦要項B-2に基づく、特別輸送作戦の発動を提唱』します』
「ヨナ?」
「イリス様、お願いします」
「許可します」
『許可を受領しました。
現時点をもって遠征艦隊は和平行動命令を破棄。
作戦要項B-2を発動。
遠征艦隊は全艦、第1種戦闘配置。
『択捉<えとろふ>』、主機全力運転』
『続けて『前龍驤<ぜんりゅうじょう>』への命令下達を確認しました』
「ヨナ、古代戦艦イリスヨナ始動」
「はい」
イリス様に求められ、機関に熱がこもる。
『艦載機はただちに発進準備。全機発艦してください』