幕間:ドラゴンキラーの憂鬱2
憎みの目で睨みながら、指示をきいている理由を見つめているのに気づく。
制服ジャケットに縫い付けられたワッペンは、イリス漁業連合が自分が彼女らを御するために作って与えたもの。
それは『ドラゴンキラー記章』という、恐ろしいのか馬鹿なのか判断に悩む名前がついている。
受け取ったときは勲章はともかく布切れ1枚にそこまでの力があるのかとは思ったが、実際に効果は絶大だった。
コレ自体を求めているわけではないのだが、彼女たちがいちばん求めているものは簡単な言葉にしてしまえばただの復讐だ。
「お前は竜騎兵と戦いたいんだろ」
「そうです」
「だったら無茶はやめろ。同志のことも説得しろ」
たとえ竜騎士の経歴から自分に恨みを向けられていても、なんとかしてやりたいとは思っているから引き受けた。
あるいは無理だとわかっていても、彼女らに自分の憧れた竜騎士を許してほしいのかも知れない。
「いいか、お前たちが夜ごと悪夢にうなされていることは同僚としてよく理解してる。
だが高価で貴重な機を預けているんだ。
それに航空艦船『桃音』は操縦士の意思を汲んだりはしない。
お前らの操艦した通りに飛ぶだけだ。
そしてヨナ様はお前らの熱意は尊重してくれるが、自殺には幇助しない」
自殺するようなものは操縦士にできない。
「クソ竜騎士崩れが」
「わかったか?」
「わかりました!」
そうでなければ、自分も作戦部長を説得してやれない。
同僚として、理由は違えど飛べないとなればどれだけ悔しいかはわかるつもりだ。
それでも自分には上官として報告義務があるし、口をつぐんだ程度では作戦部長を相手にとうてい隠し通せやしない。
「よし行け。訓練を再開する。緊急離陸からもう1度だ。死んだら実戦には出れないことを忘れるな」




