鉱山労働者組合とドワーフ長老会3
「いや、ちょっと待ってくれ」
酋長に対して、掌砲長は指を前に向けて広げながら狼狽する。
私にはまったく理解できないことを、掌砲長は先の言葉から読み取ったらしい。
「言いたいことは理解したし、状況はわかるが急すぎる。こっちの都合もある、相談させてくれ。
ともかく、ここにはまだヨナは来てない。わかったな?」
酋長のうち数名が掌砲長の後ろに控える私を見た。
「了承しました」
恭しく礼をする。
大陸では珍しい、イリス漁業連合でヨナに合わせることで行われる挨拶を酋長たちは学んできていた。
踵をかえした掌砲長は、一目散にイリス様の元へと向かう。
「すまないが。ヨナより先に相談させてもらうぞ」
「べつに構わないわよ? 当然でしょう。すべて決定するのはイリス様なのだから」
掌砲長はひとつ息をついてから言う。
「それはそれで困りものだ」
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イリスヨナに戻った掌砲長は、私の前でイリス様に耳打ちで相談をはじめた。
べつに聞き耳を立てるつもりはないが、艦内ではセンサで聞き取れてしまうので、掌砲長の話から意識から遠ざける。
「で、ヨナはどう答えると思う?」
「嫌がるけれど、拒絶はしない」
握っていた指を解いた。
「そうか」
掌砲長はそれだけ言った。
「すまんなヨナ。酋長会議に出てもらう。急ごしらえになるが儀礼をこなしてもらうぞ」




