大陸鉄道女王エーリカ様の『お片付け』1
「極東の鉄道会長が辞任、社長は引責、役員も半数以上が交代。エーリカ様も大鉈を振るったわね」
新聞が今朝の一面トップで、大陸鉄道における断罪と組織改編を報道していた。
何を断罪したかというと、イリス伯領地の母港を奇襲で空襲した騎乗竜部隊の移動が、鉄道で行われたことをだ。
とはいえ、責められているのはあくまで大陸鉄道組織から外れた独断をしたこと。
国内軍事作戦と認識した状態で、特別列車と路線を秘匿利用し、一部役員と現場責任者が無断で運行したことを責められただけ。
イリス伯領地で起こったことの責任を問うたわけではない。
ないのだが、イリス漁業連合の職員たちにとっては、これで溜飲がひとつ下がった。
断罪したのはもちろん、美少女猫耳公爵令嬢にして極東の鉄道女王であるエーリカ様だ。
自身の出身国を襲った空襲が、自分の所有である鉄道を使って行われたのだ。
しかも無断で。
怒りもひとしおだろう。
エーリカ様を怒らせるだなんて、鉄道関係者も恐れを知らないことをしでかしたものだ。
私はエーリカ様に猫が遊ぶネズミのオモチャのようにいじめられるのは好きだが、エーリカ様を怒らせることは絶対にしたくない。
「レインは眼の前で見てたの?」
「私が見たのは、特別列車を通したタイス連絡交換駅の駅長が足を粉砕されてたところだけです」
レインは空襲直後に事態をおさめるために動いていて、途中からは鉄道や政治中枢の支持を掌握に動くエーリカ様と一緒にいた。
「駅長は現場責任者で実行犯でしたから、逃げる足だけもぎ取っておいて、証言の詰まった頭蓋を砕くのは我慢したのでしょう。
そこから先というか上というか、そちらはなんとも。
実際、影響力を残したい吸血鬼勢力が絶対うるさいし横槍入れてくるでしょうに、よくやるものです」
「さすがエーリカ様だわ」




