造船港湾復興計画 / 占守型海防艦への移行2
「きゅう」
思わず肺が絞られるみたいな声が出た。
「ヨナ、しっかり」
「大丈夫です。ちょっと残念に思っただけで」
貧血のような声が出たが、別に倒れたりはしていない。
択捉型海防艦の全14隻揃い踏みという、実艦でなかった光景が見られるかと期待していたのだけれど。
私の趣味はどうでもよくて、問題はフーカの今後の見通しだ。
「じゃあ新造艦の建造と補充はないの?」
「いえ。電動機と電池の都合がつきましたので、占守型と命名して電動の海防艦を建造します」
「そういえば電池なんて拾ったわね」
いつかイリスヨナごと潜った国外の古代戦艦遺跡から、無言で拾ってきたものの中に黒いモノリスな電池が含まれていたのを思い出す。
古代戦艦の超技術で作られた謎電池で、大きくて分解もできないから魚雷や電信には使えないなぁ、という話をしていたが。
モータをなんとかして、海防艦に載せて使ってしまえというのは確かにひとつの回答な気がした。
「充電は古代戦艦イリスヨナから行います」
古代戦艦イリスヨナなら事実上無限に電力を取り出せるので、電気代は無料だ。
「無限の熱量で精錬ができる工廠の次は、燃料なしに動く漁船か。商人の夢が広がるな」
まあ私は商人じゃなくて政商なんだが、と掌砲長。
それでもご機嫌の様子だ。
ミッキは特に高揚感を表出せずに淡々と話を続ける。
「とはいえ主機としては性能不足ですので、択捉型ほどの速度は出ません。
択捉型というのはそういう意味でもあります」
原典である大日本帝国海軍では占守型というのは択捉型の前型だ。
まあ、それをいったら雷型駆逐艦の命名もかなりアレなので。
「船体は択捉型をそのまま使います。原典も択捉型と占守型はほぼ同じ船体ですし」
それ、ミリタリィ趣味のひとが聞いたらきっと形状に違いがあるって言いながら怒るやつだ。
「ヨナ、あんたはいいわけ?」
「すっごく気にはなるんだけれど、だって肝心の実物の艦の姿がわからないんだもの。どうしようもないわ」
好きだけれど、姿がはっきりわからない海防艦の方が多いのだ。
模型とかも小物の有無で艦名別になる『択捉型海防艦シリーズ』コンバーチブルキットになっているし。
だって、大日本帝国海軍が資料もろくに残さず、写真とかも処分してしまったから。
アメリカ海軍も実物をたくさん沈めちゃったから。
日本もアメリカも、せっかく作ったのだからちゃんと残しておいてくれればよかったのに、戦争だからというつまらない理由で、なんともひどいことをする。




