幕間:末義妹<コッツウォルズ>ちゃんの周りの大人たち2
「<コッツ>飛行士、隊長は、隊長はすごい方なんだ。俺たちのあこがれの」
「その話何度目だ? ほら歩け。すまんな<コッツウォルズ>」
「えと、いえ」
泥酔したユエル副隊長は、いつも同じ話を繰り返しする。
だから隊長さんが立派な方なのはよくわかっているのだけれど、その隊長さんに肩を借りている状況はいいのだろうか。
「<ロイヤル>艦長も、たびたびこんなですみません」
「義妹を迎えるのは義姉の努めでしてよ。」
操縦士たちはたまに就業後に飲み屋にくり出す。
その際は<コッツウォルズ>の姉たちに連絡がいく。
すると早めの迎えが来て、今日は<ロイヤル>義姉様。
たまにヨナ様がふらっと迎えに現れることもあり、飲み屋で総員起立が行われたりもする。
挨拶をして、先に失礼する。
早々に潰れたユエル副隊長も、隊長に肩を借りてそのまま帰っていった。
帰り道、他に話題もないので、きょうあったことを話す。
「きょうはユエル副隊長が懲罰を受けたので、それを慰めようという会でした」
「人手不足ですわね」
<ロイヤル>義姉様からすると、隊長が判断した懲罰を、隊長本人が飲みに誘って慰めるという流れはおかしいらしい。
「まあ、艦隊も航空部隊のことを言うほど余裕があるわけではないですけれど」
ちなみに、きょうはアルゴ義姉は釣りに出かけて不在、寮監のレスタさんは寮生の脱柵があって捜索中。
それを良いことにイソイソと迎えに出ようとしたヨナ様を押し留めて、仕事の忙しい<ロイヤル>義姉様がやってきたそうだ。
「同僚との信頼関係を作ることの大切さはわかりますわ。
ですから受け入れていますが、子供を酒場に連れて行くなんて。
やはり賛同はできませんわね」
そうなのかな、酒場は騒がしくて楽しいし嫌な目に合ったこともない、と私は思うし、ロイヤル義姉様は『カタイ』と周囲は言うけれど。
「嫌だったらいつでも帰ってきて構いませんわ」
「みんな優しいです」
ロイヤル義姉様は最近、手を差し出すと、綺麗な手で握り返してくれるようになった。
そうしないとフーカ様が静かに怒るから、フーカ様のそういうときの態度をロイヤル義姉様がすごく怖がっているから、というのが理由のようだけれど。
でも別にかまわない。
「そう。ならよかったですわ」




