VS地上夜戦 / 幕間:艦長アルゴ、出撃
停車した戦車の後部扉をアルゴが軽快に叩く。
「提督は生きているかぬ」
「はーい、なんとか」
「全員生きてるよ。負傷者の収容を頼む」
アルゴはすでに装備を済ませていた。
丈の短いスカートのまま着こんだ腰回りの重装備が、軽ろやかな印象のイリス漁業連合の制服の上にあって、よけいに重量増しで見える。
「操舵手が地上では荒事を担当とは、ご苦労なことだな」
「構わないぬ。ウチの艦隊はヒトが足りないから、幹部要員は出来るやつが掛け持ちだぬ」
「それで試作品をしょって出撃か。準備不足ですまんな」
と言ってみたものの、立案した作戦課長と断行した提督、ひいてはヨナのせいなので、私が責任を引き受ける筋合いではないというのが実際のところだが。
背の低いアルゴが腰に吊った弓なりの重量物は長さが身長を超えている。
「いや、これは良いモノだぬ。ヨナの日本の武具、試作でもすでに美しいぬ」
アルゴが自らの腰から生えた太いそれを愛おしそうに指でなであげ、瞳は何かの熱を注ぎ、私は含まれている感情を見つめる。
「美しい、ね。それはよかった」
私はそうは思わなかったが。
ヨナからネタをきいた時、効率を考えろよわけわからん、と思った。
それだけのことをする理由があるのだろう、と努めて冷静に考えて再現してみたものの、やっぱりメリットがわからなかった。
成果物からは推測できない固有の事情があったのだろうが、プロダクトからうかがい知ることはできない。
わけのわからない人造物は、わけがわからないから怖い。
急に周囲の暗黒森林が鬱陶しく意識される。
向こう側を伺い知ることはできない。
気乗りしないという演技もそこそこにどう見てもやたらと生き生きしているアルゴと、自分を比べてひとりごちる。
「やっぱり私には向かんな。こういう場所は」
空調の効いたイリスヨナの艦内で毎日シャワーを浴びれる生活に、はやく戻りたかった。




