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VS騎兵隊15 / 幕間:鈍攻

「転進しなさい」


張り上げている気配もなく話すような美しい声が、砲撃の鳴り止まない戦場に響いた。


「攻撃」


短く明瞭な指示。


戦場の最奥から、列車砲をひいていた汽車がゆっくりと進みだす。

こちらへ向かって。


先頭には童女が立っていた。

豆粒のようにしか見えないはずのそれは、混乱する戦場にあって誰もが無視できない存在感を示す、美しい肢体の金髪の童女。


戦いがやってくる。

周囲のわずかな守備隊を除けば、あとはほとんど工兵のはずなのに、列車の後部から上半身を覗かせる、あるいは列車に並走している兵たちが、とても恐ろしいものにみえる。


勝ち戦は工兵ですら精鋭に変え、負け戦は精鋭すら逃亡兵に堕す。


細かい指示や察するということのできない戦場で、敵のあけすけな言葉が飛んでくる。


「殺せ殺せ! 騎兵も指揮官も区別なく! 捕虜をとる余裕はないぞ!」


悪いことに、相手は工兵の集団。

相手にもこちらを拘束するほどの余裕がないとなれば、捕虜をとっても反乱の危険があるため、捕虜をとらずにこのまま全滅させる。

少なくとも数を減らしたほうが都合がよいのは間違いない。


歩兵はもう助からない。

それに、こんな一方的な殺され方をして、兵たちがすぐに次の戦いができるものではない。


ことによってはいちど田舎に返してやらねばならず、戦闘復帰はかなり先のことになるだろう。


5人に1人は、敵の砲火をすり抜けて逃げ出せているようだが、上り坂の逃げた先は、煙とホコリでよく見えない。

強襲に都合のよかった緩やかな下り坂は、反転して逃げるには煩わしい上り坂となってしまっていた。

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