VS騎兵隊6 / 幕間:騎兵隊の壊滅的敗北1
眼の前で列車砲が全滅、2台つづけて大爆発を起こす。
情報士官としての冷静な判断が、この戦いにおける決着を相手の読み勝ちだと告げた。
戦場で『眼の前でありえないことが起こり、それが相手の意図したこと』であるならどんな事であろうと、つまり相手の術中。
やられた側はすでに詰んでいる。
現場の兵士でもある立場からすれば、たまったものではないが。
敵の間違いを祈りながら、それでも敗けによる損害を全力で縮減するしかできない。
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軽騎兵の頼りである馬は音と衝撃で錯乱し、鍛え上げられた統率による強力で繊細な戦列はことごとく壊乱。
こちらの足が止まった。
美味しい狩り場まであと少しだった距離が、一瞬で絶望的に遠くなる。
そして想定外の事態は、列車砲の爆発で終わりではなかった。
「森の向こうから城がやってくるぞ!」
見たものが信じられなかった。
移動城なんて大きくて遅いものが情報隠蔽できるものではない。
だが水上をこちらへ走ってくる小柄な巨体は、異質な塔をもち簡素ではあるが確かに城。
しかし冷静に立ち直ると、情報士官であるフィッツには心当たりがあった。
いつか見たことのある味方の古代戦艦に、似ているが非なるもの。
食料を運ぶために、近くまで来ているという情報もあった。
「イリスヨナの人造艦船だ」
「あの城が支援物資を運ぶ輜重部隊だと言うのか?」
顔面蒼白の総隊長に『あれは自称商人なので軍隊ですらないそうです』とは言えなかった。
自称がどうであれ、向かってくるモノが我々にとっての脅威であることに変わりはない。
つづけて考えられるシナリオは、あの城が川岸にとりつき、艦船の中に隠していた大兵力を降ろしての逆撃。
あれに乗って敵が尻尾を巻いて逃げてくれる、などという甘い推測はとうてい信じることができなかった。
艦船は、こちらに距離をとったまま綺麗な隊列を守り、河川の中央に位置をとる。
「大河の上にあるうちは、こちらから仕掛けることはできんな」
上官のひとりが騎兵としての機会決定の優位を奪われている不利に歯噛みしていたが、いずれそこから出てくる敵との白兵戦をやれるはずだ、というこちらの期待を、敵はさらに外してきた。
そして登場の衝撃に比して、戦場の常識から外れる見た目に小さな砲が、最初から地上のこちらに向けられていることに気づけなかった。
敵は最初から決めていた通りに、地上へ向かって砲撃を開始。




