南の森の散兵
「というかどうしてレヴァ嬢がここにいるのよ。対岸の河川沿岸都市で合流の予定でしょう」
「除隊して合流予定地に向かっていたのだが、途中で通行予定だった橋が落とされてしまってね」
艦隊は、退役した彼女たちを帰りに拾い上げる予定になっていた。
吸血鬼とやりあったばかりの時期に地上兵を雇い入れるなんて、戦争がしたいのだと思われてもまったく言い訳が効かないが。
それを言ったら漁船と言い張って艦隊建造している時点でいまさらなのだった。
「仕方がないから情報収集と、君たちに会える期待もあってここに来た。
いき違ったとしても、交易路を通って南にある川下の橋を渡るために情報が欲しい。そちらの橋まで無くなっていたらとても困る。
ついでにいうと、元戦友たちに森の中の状況を伝えようかとも考えた」
それで尋問されていたわけだ。
「わたしだけなら移動は簡単だ。目が良いから、馬があれば森の中を進んでそれほど危険もない。
だが隊全体はそうもいかない。荷物も負傷者もあるし、ほとんどが徒歩だ。
獣道や森の中を進むわけにはいかない。交易路の安全は絶対条件だが」
「抜け出した古巣に報告したくなるくらい悪い、と」
「南側の森林地帯を、敵兵が野盗のように後方を徘徊している」
それはすごい。
「ほとんどはガラの悪い傭兵上がりのようだが、訓練された正規兵の部隊も混じっていた。
そして、交易路をふくむ主要街道にはいくつかの簡易陣地が見受けられ、検問が敷かれている」
最悪だった。
「後方といえるの? それ」
ほとんど敵勢力下ではないか。
「要所に陣取られているが、兵数が少なくて、あまりに薄い。後方部隊が集まれば蹴散らせる」
つまり補給を通すにも、兵を集めて戦う手間がかかるということだ。




