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夜会6 / 飛び出した窓の向こう

「第2皇子妃、それ以上身を乗り出されては危険です」


掌砲長を追っていた魔術師が、言いづらそうに、それに品位も、と付け足す。


「この高さだけならともかく、窓の下は旧都市部。上空は歪曲と断絶の嵐です。とうてい生きているとは」

「であれば、劣鉄が飛び降りたりはしないわ。必ず見つけ出しなさい」


あからさまだった脱出路に気づけなかったことをか悔しげに唇を歪めて、絞り出す声。

死亡説をつゆとも疑っていない様子がありありと伝わってくる。


「崖に楔、商人というのは本当になんて傲慢なのかしら。権威と歴史を染み込ませた古城の壁すらも、金であがなえると思っているなんて」


振り返った廊下も、まだ空気が煙っている。

そちらはどこまでが掌砲長の逃亡劇によるものかはわからないが。


「資金の話でしたら、あの大きな貪銀の板が気になります。あれだけでもひと財産です」

「そうね、いえ、あそこまでの大きさは、金があれば贖えるとも言い切れないわ。指輪でさえ工面するのが大変なのよ」

「いったいどこから出てきたものか」


掌砲長が持っていたのは『小さめ』の精錬サンプル、『交渉』で切り札に使うために懐に忍ばせているんだったか。

まだ第2皇子妃のところへ、イリス伯領地のアルミニウム精錬所の話は届いていないようだ。


が、掌砲長が城内の裏道を駆け回ったあとだし、明日にはアシがついているだろう。


ともかく、私たちも引き上げたほうがよさそうだ。

ソフィア姫にお願いして、全員で退出させてもらうことにする。


「なんだか騒がしくなってしまったのう。わらわたちも今日はこれで失礼させて頂こう」

「ええ、また後日」


掌砲長との関係がバレるか疑われて引き止められるかと思っていたが、あっさり開放される。


再会が近いうちでないことを願うが、ちょっと怪しいところだった。

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