地下からの奇襲 / VS側面砲列<ガレオン>の古代戦艦8
地を覆う土とツタのスキマから、明滅する光が漏れる。
河岸の大地が動く。
樹木を引き裂き押しつぶし、土埃を上げて、開いた暗闇の穴に河の水が流れ込む。
スライドして斜面が開き、闇の奥に、鈍くかすかに光る巨大構造物。
暗闇の地下通路を抜けてきたばかりだというのに、眩しさに目をくらませることもなく。
『斥力推進を起動。イリスヨナ発進』
安全装置を無効化して緊急開放したゲートから、いきおいよく流れ込む大水流に逆らって。
隘路で斥力で押しのけた水と、大質量で前進して押しのけた水が白い瀑布となって吹き出す。
半ば空中に飛び出す格好で、古代戦艦イリスヨナが陽光の元へ。
あらかじめ耐衝撃姿勢をとっている乗員たちは動かず。
艦長席のイリス様と隣に立つ私だけが敵艦を見据えて。
イリスヨナの場所取りは、側面砲列のならぶ敵艦の真横。
身を晒すが、攻撃する時間は与えない。
飛びだしたいきおいのまま、わずかに船首を落としてから。
敵艦側面へ突き上げるように衝角をぶつけた。
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押し上げ、押し込む。
横腹をつきあげられた敵艦は大きく傾き、そのまま押されて水面を移動。
周囲の死んでいる古代戦艦群にぶつかり、次々と倒れ、ひっくりかえる。
ひときわ大きな死骸の刺さった小さな丘にガレオンが乗り上げて座礁。
双方の動きが止まる。
敵艦は斜め45度に傾き、イリスヨナに衝角の突き刺さった下腹を晒す。
『斥力推進を終了。各員は状況報告を』
姿勢を戻した副長が言う。
「竜骨自壊音、ありません」
敵艦の側面砲列が動いた。
イリスヨナへ俯角をとろうとして、しかし砲の可動範囲が届かない。
14門もある砲塔は、何もない空へ向かって突き立つばかり。
「フーカの言うとおりになったわね」
砲による水中攻撃は厚い水に阻まれるため、本当に至近でなければ効果が薄い。
それだけ近ければ対空砲などを潰すのが先決になるし、通常戦闘で側面の砲が俯角をとれる必要はない。
敵艦自身よりもフーカのほうが、ガレオンの古代戦艦に詳しかったということ。
丘に押し上げられて逃げることができず、接近戦で圧倒的な側面砲列はあっさりと封じられて。
古代戦艦を出入りさせるために墓所にあらかじめ存在する地下ゲート。
敵艦の戦意を示す砲撃音とともに、古代戦艦イリスヨナからの操作でゲートを開いて急襲。
あっさりと敵艦の身動きを封じてみせる、フーカの手腕。
イリスヨナが斥力推進で押せば、食い込んだ衝角が敵艦の竜骨を破断する。
「ではイリス様、ちょっと行ってきます」