門前をふさぐ敵 / VS側面砲列<ガレオン>の古代戦艦1
『竜骨自壊音を確認。敵古代戦艦を殲滅』
水中衝撃波が足元をかすかに揺らして、数秒後に空中の衝撃波が到達する。
古代戦艦イリスヨナの光学観測は、破片を撒き散らしながら水面にそそり立つ、2つに割れた船体を捉えていた。
『択捉は第一種戦闘配置を維持。艦長代理、戦闘状況は続行でよろしく』
『わかっておりますわ』
直通電話の背後から、択捉艦内の雑然とした様子が伝わってくる。
制御人格である『ヨナ』がほぼすべてを掌握している古代戦艦イリスヨナとは違う。
100人近くの乗員が手作業で動かすのが人造艦船。
掌握して艦船を動かす発令所と艦長の負担は大きい。
『しかし択捉の牽引を切らずに撃破するだなんて、すごい余裕だぬ』
『開けた水場で射程の短い敵艦と、状況が良かったもの。艦種の相性もこちらに有利だったわ』
というか、余裕ですらあった。
副長が報告を入れる。
「もう一隻は不自然なほどに動きがありません」
「戦闘中もぴくりとも動かなかったからな。やっぱり、沈めた船の仲間じゃ無かったんだろ」
敵古代戦艦を沈めたばかりの掌砲長だが、なんにもしてないけど、といわんばかりの平然とした態度。
他に類を見ない精密な調停による魚雷攻撃も、彼女にとってはなんでもないことであるらしい。
『こっちに来てくれれば簡単なのだけれど、そうはいかないでしょうね』
目的地を目前にして、足止めとなる厄介な船。
『側面砲列の古代戦艦』は、船体側面にずらりと砲が並ぶ、近接戦闘に特化した古代戦艦。
フーカから聞かされていた船種のなかにあった。