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ベッドの上でふたり、あのときの責任の話を

「え、いっしょのベッドで寝るんですか」


ベッドに乗るあたしを見て、先に横になっていたスイが言った。


「野盗みたいな兵士があちこち跋扈してる中でひとりで寝たいの?」


気にせず隣へ寝転ぶ。


「まあ確かにそうかもですけど」

「それに列車でもいっしょに寝ていたんだから、いまさらでしょ」

「それとこれとは別な気がしますが」


口ではそう言っておきながら、スイからもこちらへ身を寄せてくる。

言動は平然として見え、取り乱すことがなくて助かるが、スイも人並みに死ぬのが怖いはずだ。


「あんたが冷静で助かるわ。無理そうなら早めに言いなさい」


土壇場でいきなり限界超えられても困る。


「いえ、大丈夫です。ご遺体もいうほど大変な状態にはなっていませんでしたし」


スイは艦長として、膨張した水死体をすでに見ている。

職員たちの死体には抵抗と拷問の痕はあったが、せいぜい皮膚が裂けている程度。


「こういうの慣れるの、よくない気がしますけど」

「それは市民の倫理観で、とても尊ぶべきものよ。

でもあなたは艦長で、ヒトの上に立つ者には、相応の価値観というものがあるわ」


たとえば、貴人は平民のように法で守られていない。

だからこそ法を守る義務がないと言い張ることができ、身勝手な権力と暴力を振りかざす自由さえあるのだと言える。


しかし、法や倫理、憲兵や警官、社会通念や常識といった『大きな何か』の庇護がない生き方。

多くの者にとっては、孤独で苦しく、とうてい耐えがたい。


まあ、そういう考え方もあるという話で、もちろん倫理観は個々人がそれぞれに基準を持っているものだ。


「そうかもしれません」

「少なくとも、艦長は仲間が死んでも取り乱さずに、自分と仲間を守れる人物であるべきだわ」

「はい」

「大丈夫。あんたは乗員を守れる艦長よ」


スイが数秒黙る。


「フーカ、この前の戦闘では、わざとわたしを発令所から追い出したんですか」

「そうよ」

「やっぱり」

「あんたには、直接犠牲を出す采配はあの時はまだ早い。

あんたとイリス漁業連合には、艦長としてのクリーンなイメージが必要で、手を汚させるわけにはいかなかった」


別に庇ったわけではない。

いずれできてもらわなければ困る判断でもある。


「副長としてあきらかに越権をしていたわ、艦長。だから次は、あなたに任せる」

「ありがとうございます」

「これ、感謝するところかしら?」

「はい。フーカに任せてもらえるってことは、これ以上なくフーカに認められたってことですから」


嬉しそうなスイを見て、あたしは何かの満足を覚える。


「ところでフーカ、帰り道はどうしましょう。そもそも、歩いて帰るつもりだったんですか?」

「まさか」


坂道をローラーブレードで駆けのぼることは最初から考えていない。


「どうせ3日後くらいには迎えが来るだろうだから、それに乗って帰るつもりだったのよね」

「迎えに来るって、誰が来るんですか?」

「ヨナに決まってるじゃない。古代戦艦イリスヨナ」

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