連休明けの朝、イリス漁業連合 所属艦『択捉』の朝食事情
「ほらフーカ、わたしは朝ごはん買いに行きますよ。
フーカのぶんも買ってきますけど、ツナサンドと白身フライのミニバケット、どっちがいいですか?」
0.2秒考える。
「いっしょに行く」
朝のパン屋は択捉船内の酒保ではなく、造船所員と共用になっていて船外の購買にある。
択捉も造船所も、黙っていれば食堂で朝食がタダで食べられるのだが、自費での外食も自由となってい
る。
気分を変えたいとかどうしても好みが合わない場合に、紙に個包装されたパンを買い出ししたり、町まで外食に出たりする。
ちなみに吸血種や生肉食種など、そもそも食性が違う職員には、別途食事のサポートがある。
「あら、スイ艦長に副長まで。ごきげんようですわ」
パン屋のひとだかりの前で金髪をひらめかせていたのは、択捉の掌砲長だった。
「掌砲長、ごきげんようです」
「おはよう」
イリス漁業連合は軍隊ではないので、上下関係とか規律について、わりといい加減である。
「艦長、フライのバケットはタルタルソースが売り切れだそうですわ」
「それは残念ですね」
ふたりが話し込むのを横目に、造船員たちの人混みに割り込んで、ひょいひょいと個包装されたパンをつまみ上げる。
「桃とチーズクリーム、スイも食べるわよね?」
「ああ確保ありがとうございます」
朝食の買い出しを済ませる。
「副長、きのう教えていただいた防水手順でわからないことがありますの」
「今日の出港前に済ませたいわね。これから択捉の発令所で、食べながらでも大丈夫かしら?」




