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竜宮島の巫女姫1 / 神社『竜宮島』の建立

長く果ての見えない、異様な光景の小道。

緑の森を貫く曲がりくねった石畳の道に、数える気がおきない数と密度で、赤い鳥居が並んでいた。


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シオは教会の職員であり、船信仰を担当するシスターである。


制海権を失ったヒトの船信仰の灯火は小さく、そのうえつねに吸血鬼にプレッシャをうけている、不遇な窓際民間宗教の担当だった。


が、この数ヶ月、にわかに船信仰の周辺が活気づいている。

いや、そんなゆったりとした変化ではない。


『古代戦艦イリスヨナ』の覚醒から始まった騒動。


敵古代戦艦との、100年ぶりの戦闘と勝利。

短期間のうちに完成しつつある未知の人造艦船『択捉』。

『海洋の人類版図を取り戻す』というプロパガンダ、海産物という食料資源とともに提示された、海産業という新事業。


いまや世界中が先行きに注目している『人造艦船』に続く、あるいは先行する成果物。

それが、岬の半島をまるごと使った臨海の宗教施設『竜宮島』。


シオがイリス伯領地に派遣されてきたのは、小島とはいえ巨大な神宮である竜宮島を、教会が名目上管理するためだった。

シオのこれまでの人事評価に見合わない異例の出世、不相応な地方教会長の役職を与えられた上で。


そうしてイリス伯領地に赴任してきたからには、まずは竜宮島を自分の目で見ないと始まらない。


シオを含む教会の派遣団が、大陸鉄道の支線駅に降り立つ。

馬車列を背後に迎えるのが、教会の区域監督官レイン女史。

『天使長の子供達』のひとり、古代戦艦イリスヨナと共に文字通り大暴れしている、同年代の教会の若手職員。


「派遣団の皆様は引き継ぎや受け入れ手続きなどありますので、教会事務所のほうへ」


修道女服の膨らんだスカートから、8本の蜘蛛脚がのぞく。

種族特徴を隠すための教会職員服であるにもかかわらず、レインは蜘蛛人としての特徴、若い女の体躯を強調する仕草。


よく見ると、見慣れたはずの教会服も、レインが着ているものは何やらあちこち手が入っている。

レインの地位からいって、服の自弁も許される立場であるから、よほど目に余ることがなければ、制服の改造自体は問題ないが。


(まるで教会服を着た淫売ではないか。)


教会職員としての保守派の自分が、心中で苦言を漏らす一方で。

レインのそういった変化がどれも、健康的で美しい蜘蛛人の肢体の魅力を引き出しており、目を奪われる。


教会服の手入れも、肢体を強調するものの、決して下品ではない。

むしろ、レインを落ち着いた大人の女性に見せる。

彼女が儀式を行うなら、この場の誰より様になり、信徒たちも熱心に祈るだろう。


レイン自身は、恋人との街歩きを待ち望み着飾った、恋する少女といった様子。

自信にあふれ自愛に満たされたレインを見ていると、女として羨ましい気持ちすら湧くほど。


雑念をあわてて打ち消す。

どうにも、咎める言葉が出てこないのだった。


それに、レインは『ヨナ担当』でもある。

経験不足で実務をさせるには向かないシオが、派遣団の長に収まっている理由でもあった。


「シオ教会長は、このままリュウグウの見学へ向かいましょう。ヨナさまがお待ちです」

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