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出港の日

「チセはわたしの娘なんですから、手を出したら許しませんよ」

「出すか!」


準備を整え、出港の日。

公爵令嬢エーリカ様に念を押されたトーエの参加は、その後に判明したチセ消滅の危機から発生した急な要件により、数日後ろにズレることとなった。


あとから特急列車で参加の予定。

向こうでパーティ参加どころか観光もなしで、日程的には完全に『行って帰ってくる』だけになる。


『ほら参加はするんですよ』なんて言い訳も甚だしく、エーリカ様にレトリックなどという惰弱なものは通用しない。


というわけで、今からエーリカ様のお怒りが怖い。

次に会ったとき、いったい何をされるやら。


「震えてるところすみませんけれど、ヨナさん、自分で気づいてます? 頬が緩んでますよ」

「え、本当?」


マズイなぁ。


「チセの母親としては他の女に娘を預けるのは心配なんです。

だって、ヨナさんはかわいい女の子とみたら相手が誰でも節操なしに口説き始めるって、この前レインさんが言ってましたし」

「あなたたちが仲良くなっていて私は嬉しいわ」


なんて俗っぽい嘘を広めてるんだレイン。

教会の高位な職員なのに。


「チセ、わたし好みですごくかわいいですし。

誰からも文句の出ない薄幸系の美少女で、絶対にヨナ様のストライクゾーンだなあって」

「義理の娘に惚気けるんじゃない」

「実際ヨナ様にはいちど、わたし含めて口説き落とされていますから心配で」


どうしても欲しかったデザイナとしてトーエを熱心に勧誘したのは事実だけれど。

子持ち主婦をオトした覚えはない。


「それにヨナ様、出会ったその日に、わたしとチセを脱がせて、服を持って帰りましたよね」

「私はどんな変態鬼畜よ!?」


あの日、事故ってケガをした私の血液が染みてしまった床板と一緒に、二人の服を回収したのだ。

イリスヨナの化身の体液、貴重なサンプルだし放っておくわけにもいかなかったので。

着替えは外で待ってプライバシーは守ったし、服と床板は弁償した。


「私はイリス様一筋です」

「なら安心しました」


さわやかな笑顔で言われても、わたしにはその発言の意図が読めない。

後ろから蜘蛛脚で忍び寄ってきた修道女がささやく。


「私には手を出しても大丈夫なんですよ?」

「レインも変な煽り方しないで」

「あ、煽れてます? だったら嬉しいなあ」


それからレインは私を後ろから腕と数本の脚で絡め取り、耳元で。


「ヨナ様を籠絡できたら教会でのレインの人事評価も上がるでしょうねー」


この世界の教会は、いつから美人局を送り込んでくる組織になったんだ。

もしかして元からそうなのか?


「それ以外の方法で出世して頂戴。お土産は持たせてあげるから」

「ありがとうございます」


主に私からイリス家経由の献金とか、今回渡航による国外の情勢情報とかで。

外向きの笑顔でにっこりするレイン。


ともあれ『こちら側』であるレインが教会に信用されて出世するのは、私にとってもメリットのある話だ。

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