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腕っぷしの平和利用について / 札束で殴るおしごと / 掌砲長のふるなじみ2

グランツ家の事務方との会合が終わって。


「またお嬢様と仕事ができるたあ、嬉しいですなぁ」


会計管理が仕事の事務屋とは思えない野卑な言葉使い。

筋肉がある体つきではないが、拳だけが角ばって硬い。


「こいつの本性はケンカ師で、腕っぷしで戦うのに飽きたから札束での殴り合いに転向してきた経歴の持ち主だよ」

「そんなやつを拾ったのは他ならぬお嬢様でしょうが」


ふたりの間に特別な距離感があるのか、久しぶりだと言っていたのに近況報告などはない。

すぐにグランツ家から来た事務方たちの話になる。


「それで、人選の方はどうなんだ」

「そこは、グランツ家の人材の幅広さってやつで。

いつもどおり、各勢力入り乱れで」

「つまり、大国アルセイアからも反対勢力の人材が流れ入んでいるわけか」

「吸血鬼の紐付きもいますよ。オモテで繋がってるやつも、ウラで繋がってるやつもいる」

「そうかい。あんたが楽しそうでなによりだ」


楽しそうな男に、掌砲長はため息。


「まあ、お前もいるから大丈夫か」

「俺のこと信用してもらえているなんて、嬉しいじゃあねえですか」

「そんなんじゃねえよ」


ツッコミを入れてもうひとつ息を吐く掌砲長。


「とはいえ、今回は仕事は楽なほうだよ」

「といいますと?」

「考えることがひとつ少ない。

私たちがやっていた『仕手戦』っていうやつは情報戦で、何かと隠すことが多かったけれど。

イリス漁業連合の儲けのしくみは単純明快だ。

『海からタダで拾ってきた魚を、陸で売る』

仕組みを隠すとか、バレると困るとか心配しなくていい」


----


「じゃあ俺はここで」

「えっ、何するつもりなの?」


このあたりは造船ドックで、作業員のツメ所しかないのだけれど。

答えの代わりに視線を向けられた章砲長が言う。


「別にヨナに隠し事する必要はないぞ。こいつはこっちが困るくらいに裏のない雇い主だ」

「腕相撲ですよ。建築員に近づくには腕っぷしの強弱をやるのが手っ取り早い」

「お前はいつもその手だよな」

「でも他の事務屋はやらんでしょう。俺しか持ってない情報源とコネになる」


じゃ、と手をあげてさぱっとその場を離れていく。


「掌砲長、こういう言い方はなんだけれど、あなたの元部下って、どれくらい信用していいのかしら?」

「あいつのことか? 信用はまったくできんよ?」


即答された。


「でもヨナ、あんたがあいつに裏切られることは絶対にないな。安心していい」


どうしてそんなことを断言できるのか。

問いかけると、掌砲長から斜め方向の回答が返ってきた。


「言ったろ? あいつはケンカが好きなんだ。

ケンカ師が、腕っぷし勝負よりもっと面白いケンカを求めて勝負師になっただけ。

経済政治がさっぱりシロウト以下なヨナとケンカするよりも、ヨナについてったほうがアイツに面白い。面倒事がたくさん降ってくるって、すぐに確信してもらえるよ」


と、面倒事の数々を確信して言う掌砲長。

私はその返答に、信用云々はもうどうでもよくなっていて。

ただ政商一族のお嬢様である掌砲長の目に見えているという、私の将来の面倒事たちについて一言。


「え、それは困る」

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