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万能戦艦イリスヨナ / 愛しのイリス様のためなら古代戦艦だって総て滅ぼすことができる【百合】 / 愛しい我が巫女姫のために艦隊作るよ  作者: MNukazawa
デザイナ・トーエの一日 / 人類の海洋再進出と吸血鬼の影 / VS巨大イカ空中決戦
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海軍知識文化の絶滅と吸血鬼の暗躍、というあやしい歴史ネタ、の雑談

「古代戦艦が活動を活発化している兆候は、わたしが王室から抜け出した頃に、すでにあったわ」


古代戦艦イリスヨナの発令所で、ミッキがピコピコとシミュレーションをしているのを横目にしてフーカと話す。

イリスヨナである私がどれくらい意識を外して大丈夫なものかテストを兼ねている。


「雑談って感じじゃなくなってきたわね」

「でないとテストにならないでしょ」


まあ確かに。


「古代戦艦はこれまで機関不調な状態が当たり前で、調査も進んでいなかったの。

古代戦艦を建造した超古代文明の技ははるか神代に失われて久しく、残った整備技術も100年前に海洋版図と共に失われたわ。

だから、急に調子が良くなった理由もわかってない。

大国ストライアでは古代戦艦の技師を集結して全力で原因究明にあたって、なんの成果も得られなかった。

古代戦艦は、少なくとも現在のあたしたちの魔法とはまったく異なる技術体系によって動作してる」


フーカは話している途中から、まるで何度も読んで暗記した古典をそらんじるような口調になっていた。


私は端的に感想を述べる。


「いまいちピンとこないわね」

「あんたのことでしょうが」


そう言われましても。

ヒトが誰でも生物学に詳しいわけじゃない。


「廊下の照明、あるでしょ。アトモライトとか、床の発光。

あれ、どうして光ってるのかすら、正直わからないのよね。

どれも古代戦艦のエネルギィとコントロルで光っていることは確かなのだけれど、それ以上はからっきし」


そこから謎なのか。

この世界は魔法が基幹だからなぁ、私の知識で何か参考になりそうなものってあるだろうか、と考えて。


「タングステンのフィラメントが光る現象って知ってる?」

「バカにしてんのッ!?」


キレられてしまった。


フーカは巫女に憧れた艦船オタクの元王族だが、古代戦艦だけでなく魔法や錬金術も知識がある。


「だって、魔力を有効活用するには結局、働きかける対象であるこの世界についての深い理解が不可欠だもの。

それに古代戦艦については何もわかってない。わかっていないなら、直接関係無さそうな知識が、思わぬところで古代戦艦の理解に役立つかもしれない。

どうしても巫女になりたくて、なりたくて。必死に勉強したのよ。

少しでも古代戦艦を理解できれば、手が届くかもしれないと思ったから」


感傷的な雰囲気になってしまったので、その話は閑話休題として流すことにした。


他に何か役立ちそうな記憶はないかなと記憶を探してみるが、蛍光灯を知っていても、蛍光灯がなんで光ってるのかを、私は説明できない。

小学生の頃に図鑑で見た解説図ではマイナス電子が浮遊していたけれど、マイナス電子ってそもその何だったのだろう。


教育が一般まで広く行き渡っているかどうかはともかく、ミッキたち技術者の様子をみるに、この世界にもきちんと科学はある。

古典力学、原子までの化学があるうえで、魔法も存在する。

そして建築技術は、日本や私がいた世界を凌駕する。


ヨナになったばかりの私の理解が追いついていないだけで、この世界のほうが進んでいる分野も多いのだろう。


「っていうか、本当に大国アルセイア側は古代戦艦について何も知らないのね」


ふんっと荒い鼻息。これは自分の知識自慢が半分、もう半分は新情報への期待が少ないことへの不満か。

こういうとき、話に加わるのが副長だ。


「古代戦艦の所有が、辺境国に分散していますからね。横の連携は大国アルセイアの意向でしていないのだと聞いています」

「吸血鬼の多いお国柄が出ているわね」

「えっ、そこ関係あるの」


というか吸血鬼が多いって。

我々イリス漁業連合は吸血鬼に危険があるとして目をつけられているらしいのだけれど。


「100年前の大海戦に敗北して、そのあと海軍がほとんど残らなかったのは、吸血鬼が積極的に残存勢力を狩ったからよ」


海戦以上に吸血鬼の暗躍のせいで海軍関係者はほとんどが死に、海軍の組織・技術・文化が途絶えたのだという。


確かに、いくら海を失ったといっても、海軍について情報すら残っていないのは不自然に思っていた。

この世界には100年をこえて生きる長命種だっているのだ。


考えてみれば、100年前にあったという大海戦の生き残りである海軍軍人や造船技術者が、そうとう生き残っていてもおかしくはない。


「それ以前から目の敵にされていたけれど、洋上版図とともに力を失って、自分たちを守りきれなかった。

当時の政府が吸血鬼との共生関係を確立するために、切り捨てられてスケープゴートにされたところもあるんじゃないかしら」


本を読んで、それなりにこの世界の歴史も知ったつもりになっていたけれど。


「本には書けない歴史秘話ってやつね」


災いの降り掛かった海軍関係者がみな死んだというなら、語り残す者もないのだろう。


が。


現代日本のインターネット陰謀論が嫌でも目に入るジャンルでスノッブをやっていた艦船フリークとしては、条件反射で『まあ、本当かどうかわからない話よね』と受け取って。

しかし、そんなに根深い因縁のある話なら、レインの話以外にも情報収集しておくべきかもしれない。


期待薄だが、参考文献はあるだろうか。


「ちなみにソースは?」

「ウチの実家、古代戦艦を擁する古い王族よ? それに吸血鬼勢力に押し負けて証拠まで処分した大国アルセイアと違って、当時の資料も残っているんだけど」

「ああ、それは」


私がやったわけではないけれど、まあなんというか、なんとなく、耳が痛い話だった。

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