デザイナ トーエの一日 / エーリカ様の言葉
「あっ、フーカの馬鹿っ」
フーカがエーリカ様の鼻をあかした瞬間。
レインが小さく舌打ちした。
遅れてフーカも気づく。
トーエからしても、フーカの実力は相当のものだとわかる。
御三家直系にして本当の実力者であるエーリカ様が魔力を向けて、平然とできるのはそれだけで普通ではない。
もちろん平民からそのような天才が生まれることもよくあるけれど。
ふつうは、どこの高位な貴人の血族か、と考える。
トーエはフーカの事情は知らないけれど何かあるのは当然気づいていたし、エーリカ様に漏れて困るであろうことは、これまでの経緯でなとなく察しがつく。
魔力がまったく使えない、感じもしないヨナさんだけが平然としている。
何が起こっているかもわかっていない様子。
ただ嘆息して。
「フーカったら。フーカ、私はエーリカ様とは絶対に仲良くしていたいの」
それは正しい判断だと思う。
「あー、ヨナ、別にいいのよ。確認しておきたいことがあっただけだから」
その場の空気を作り、壊したのもまたエーリカ様だった。
「フーカ、知りたいことはわかったから、あなたももういいわ。思ったとおりに踊ってくれて、とても良かったわよ」
と、褒めながら用済みのあしらい。
いいように操って欲しい反応だけ得て、それが当然という態度。
謝罪の一言も言わず、申し訳なさの欠片もない。
「でもそうね、良いものを見せてもらって、何も与えないというのはよくないわ。
フーカ、あなたはヨナの麾下だから、私から特別にひとつ教えてあげる。
もし、あなたが私の『敵』になりたいというのであれば、まずはヨナを倒すことね」
ここまで挑発しておいて、最初から相手していなかったと宣言。
これまでの状況がわかっていないまま、フーカに対してちょっと気遣わしげなヨナさんの様子。
「フーカ?」
「直々のお言葉を頂き、ありがとうございます。エーリカ様」
フーカは落ち着きを取り戻していた。
滅茶苦茶悔しそうだし、ヨナさんを倒したいと思っているかどうか、わからないけれど。