イリス漁業連合、制式船員セーラー服(予定)のお披露目
「本日はお集まりいただきありがとうございます」
トーエがギャラリィに微笑みかける。
集まっているのは主にイリスヨナの発令所要員と、イリス漁業連合の女性幹部候補。
つまり、だいたいいつものメンバーだった。
「仮称イリス漁業連合の幹部女子制服を発表したいとおもいます」
発表というよりは品評会だけれど、トーエの服飾センスを信頼している。
お着替えがあるので今日は女子のみ。
いや、そうでなくても女子しかメンバがいないのだけれど。
「どうしてこんな偏りが?」
「相手が女の子であれば見さかいなくコナかけてるヨナさまがそれ言います?」
「女の子だけ集めているつもりはないのだけれど」
しかし現実はこうである。
(うら若い女子しかいない。)
レインのツッコミに対する反論が虚しい。
男女を問わず、とにかくヒトが欲しい状況だが、とはいえ増員するツテもアイデアもないのだった。
「それでは、はりきってどうぞー」
トーエがそれっぽい仕草とともに部屋を仕切った簡易なヴェールを開くと、制服を着たフーカが現れる。
「わあ」
「いいですね」
無言のメンバを含め、第一印象はおおむね好意的な模様。
試作中に監修で見ていた私は、仕上がりにあらためて満足する。
さすが美術家トーエの服飾センス。
「そうそう、これこれ。懐かしい感じだわ」
フーカが着ているのはセーラー服だった。
色は正統派セーラー服と言うべき深蒼と白の2色。
セーラー服の基幹であるセーラーカラーに深蒼の2本線。
上着のスソはイン・アウト両対応。フーカは白いシャツをアクティブな外だしルックで着こなしている。
当然のミニスカート。
制服規定なんてルールは破るために設定されているもの。
女の子はスカートを短くしたい本能がある(出典は私)。
セーラー服といえば現代日本では女子高生の制服だけれど、もともとは船員服で男性が着ている服だった。
そういうわけで、セーラー服は船乗りの制服とするのにふさわしい。
かわいいし。
日本のセーラー服から見慣れない差分として、背中の腰あたりにつけられた大きなリボン。
それと控えめながら、フーカのどこか気品ある雰囲気にあわせた個人向けオプションの細かなフリルが覗く。
見慣れた高校生の服装に華美なオプションは、一言で言うと、コスプレセーラー服。
けれど、トーエが本気でデザインした漁業連合の制服は、のっぺりした布や数回着たらほつれるような安物ではなくて、生地も縫製も日常使いできる本物だ。
それに、フーカは目元が鋭く品ある雰囲気をまとったお姫様で、装飾過剰気味なセーラー服も、ドレスを着ているかのように映える。
「ちょっと動いてみてもらえる?」
トーエが指示をして、フーカが歩いたり、走ったり、軽くその場でジャンプしてみたりする。
「いいわね」
私はトーエのセンスに満足してうなずく。
「どうかしら? ほら、好きに褒めてみなさいよ」
フーカはいつも通り、褒められて当然という自尊心。
さすが(隠れ)王族系女子。
ふわりとトーエが笑顔で答える。
「素敵ですよ」
イリス様とチセはまだ服についてわからない年頃なのか、特に意見はないようす。
ミッキや副長あたりは『いいんじゃないでしょうか』と、服の見た目には興味なさそうだった。
と、目をまんまるに開いているスイが一言。
「かわいいです。かわいいですけど、これは、エロい」