見知らぬ街
「あれ?ここどこだ?」
急な尿意におそわれ目が覚めた。
どうやら私は、居眠りをしていたようだ。
慌てて飛び起き、寝ぼけ眼で電車を降りた。
そこは、まったく見知らぬ街だった。
そんな事はおいといてまずトイレを探さなくちゃ。
でも、慌てて降りたこの駅にはトイレがなかった。
仕方なく駅の改札を出て、適当に道を進んだ。
しばらく歩けば、コンビニぐらい見つかるだろうと軽い気持ちで歩いた。
右に曲がり、左に曲がり、やや早歩きでどんどん歩く。
ところが、歩けどもコンビニはおろか建物さえなにも見えてこない。
周りを見渡せば、ポプラ並木の道が延々と続いている。
曲がっても、相変わらず同じような道が続いていた。
遥か遠くに民家らしきものは見えるのだが、
家は一定の距離をたもったままこれ以上近づけない。
どうしよう。このままでは、間に合わなくなるかも。
私は、徐々に頭がトイレの事でいっぱいになっていった。
犬だったらどんなによかっただろう。
残念ながら人間の私は、
そこら辺の木の陰でする訳にはいかない。
ああ、そろそろ我慢が尽きてきたかもしれない。
普通に歩くのさえ、次第に困難になりつつある。
トイレ、トイレ、トイレ…呪文の様に唱えていた。
もうだめ…だ。
これ以上歩いたら漏れそうなぐらいの時に奇跡は起こった。
目の前に急にトイレのドアが見えた。
「ガチャリ」
扉を開け、一目散に中に飛び込んだ。
「間に合った!」
ほっとため息をついた時、私は重大な事を思い出した。
そうだ私は今日、死んだんだっけ。
自殺?他殺?自分が死んだ理由なんて知らん。
知りたくもない。
ただトイレに行きたかったんだ!




