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獣の太陽  作者: garashi
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Soldier and dog girl meet ? 2

 舗装されていないでこぼことした地面の道を小柄な者が走っている。なかなかの速さだ。その顔は鴉の仮面で覆われている。その仮面の嘴は半分程で切断されており、その断面から素顔が少し見え隠れしている。おそらくは鴉の構成員だろう。驚くべきは、さきほど尋問を受けていた男を肩に担いで走っているという点だ。


「……ここまでくれば大丈夫でしょう」


 そう言うと、速度を落として止まる。止まるや否や担いでいる男を地面に放り投げる。


「ぎゃん! い、いってぇ……」


 男は腰をさすりながらふらふらと立ち上がる。


「て、てめぇヒバリ! 痛いじゃないか!」


 ヒバリと呼ばれた鴉頭はヘルメットを脱ぐ。すると、ふわっとした赤毛の髪が美しい、整った少女の顔が出てきた。その頭には可愛らしい小さな獣耳がついている。そして眠そうな目で男を見る。


「せっかく助けてあげたのにその言い草は何ですか。もう助けてあげませんよ」


「い、いや、これからも俺が危ないときは率先して助けてくれ」


「はぁ……」


「……すまん、助かった」


「いえ、無事ならいいのですよ、ヤイロ」


 男の名はヤイロと言うらしい。ヤイロが片腕を押さえているのを見たヒバリがその腕をつつく。


「ぎゃああ!! いってぇ!! 何しやがる!!」


「ああ、すみません。折れているのかなと思って」


「思ってじゃねーよ! ふざけんなぶっ殺すぞ!」


「何か言いました?」


「ぐ、いや、何でもねぇよ……とにかく、俺は片腕折れてんだ。重症を負ってるんだよ!」


 ヤイロの訴えを無視してヒバリは先に進む。


「おいヒバリ! 無視してんじゃねーぞ!」


「さっさと街へ戻りましょう。先ほどついでに馬車の馬も殺しておいたので彼等に追いつかれることは無いと思いますが、万一またばったりは嫌でしょう?」


 それを聞いたヤイロの顔が引きつる。


「そ、そうだ、ヨタカさんが殺された! あいつらにやられたみたいなんだ!」


 ヒバリが足を止める。その顔には少し驚きの色が出ている様だ。


「ヨタカさんが? それは本当なのですか?」


「ああ、あいつらがそう言っていたんだ。ヨタカさんはあいつらを仕留めるために奥の集落まで一人で出向いたんだよ。でもあいつらは生きていた」


「ヨタカさんは能力持ちです。そう簡単にやられるとは思えませんが……」


「あの人間と一緒にいた新人類の野郎が能力持ちだ!」


「能力を使っていたのですか?」


「い、いや、使っていたかは分からんが、半端ねぇ馬鹿力だった。普通の新人類にはあんな力出せねぇだろ!」


「私はその馬鹿力とやらは知りません。ヤイロは非力なので、大げさに言っているんじゃないかと疑っています」


「な、なんだとぉ!? おまえら能力持ちが異常なんだよ!」


 ヒバリは再び歩き出す。


「それよりもさっさと戻りましょう。どの道、あの人間は死にます」


「な、なんでそんなこと言えるんだ?」


 ヤイロが走ってヒバリの隣に追いつく。ヒバリは前を向いたまま答える。


「クイナさんとカケスさんが動きます」


 それを聞いたヤイロの顔がさらに引きつる。


「な、あの二人が……!?」


「はい。ボスが直々に命令を下したようです……成程、ヨタカさんが殺されたからボスがお二人をけしかけたのでしょう。そう考えれば納得がいきます」


「だから俺がさっきから言ってるだろ」


「ヤイロの言うことはあまり当てになりませんので」


「な、なんだと!?」


「ほら、行きますよ」


 ヒバリは適当にヤイロをあしらう。


「お前はクイナさん達に加勢しなくていいのか?」


「いいんです。私はそんな指示を受けていませんので。それに、あの二人の邪魔になるだけでしょうから」


 それを聞いたヤイロの表情が曇る。


「能力持ってても邪魔になるなんてことがあるのか……」


「それはそうでしょう。能力持ちの中でも力の強弱はあります。あの二人より強い能力持ちなんか、ボスくらいのものじゃないですか? 対して私は、ヨタカさんより弱いですよきっと」


「そ、そんなの、実際に戦ってみないと分からないんじゃねぇか?」


「分かりますよ。私の能力はせいぜいさっきみたいに地面を捲るくらいですから……能力以外は貴方とそんなに変わりはしませんよ、ヤイロ」


 ヒバリが少しだけ頬を緩ませてヤイロの方を見る。


「もしかして、私の事を気にかけてくれているんですか?」


「ば、馬鹿! そんなわけねぇだろ!」


「なんだ、残念ですね」


 ヤイロが必死に否定する。そんな様子を見ながら、ヒバリの頬は少しだけ緩んだままだ。すると、ヤイロが顔を俯けて小さな声を出す。


「ただ……お前は村から出た唯一の能力持ちだ。だから、弱いとか言うんじゃねぇよ……」


 それを聞いたヒバリは真顔に戻ると前を向き、つぶやく。


「ごめんなさい」


 その後は、言葉を交わすことなくヒバリとヤイロは拠点を目指した。

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