半面の空想
『どこか遠いところへ行きたい。』
そう思いながら目を閉じる。
『どこかってどこへ?一体自分は何者で、どこに帰るべきなのだろうか。』
そう思いながらも尚、目を閉じていると鼻の奥がツンとするのがわかる。
瞼の裏が熱くなり、その熱が表面を覆うのがわかる。
『くしゃみが出そうだ。』
そう思ってハッと見目を開ける。
『変わっていない。ちょっと離れた所に座ってスマホを触っている人も、静けさの中で誰かがぼそぼそと話す声も、暖房の音も。
何も変わっていない。
『何か変わるかもしれない。』
不謹慎だが、ひょっとして自分は病人で今は夢の中。目を開けたらいつの間にか(青)仰向けで白い天井と目が合うのだ。
いや、もしかしたら転生とか召還とかされて異世界に行くとか、タイムトリップして過去に辿り着くかもしれない。
いやいや、この世界はスノードームみたいなもので、巨人が人類とかの成長・滅亡をじっと見つめているのかもしれない。
いやいやいや、もしかしたら突然誰かが目の前に現れて
「養ってあげる。」
「内定をあげるよ。」
と言うかもしれない。そうなったら喜ばしい限りだ。就職活動をしなくていい。まあ、実際に来たら警戒心丸出しになるが。
そんな馬鹿げたありえない空想にふける。
そんな事をしている場合じゃないのに。無駄なことに頭を使い、それを書き留めるために紙とインクを無駄にする。しかも、誤字が酷い。よし、”酷い“は思い出せた。
そう言えば昨日隣人が隣室の人が騒がしかったな。その隣の部屋で黙々と今日受ける企業の研究をしたんだっけ。
何なんだ。あれは。腹が立つ。
『ああ。どうでもいい。』or『あー…どーでもいい…。』or『どうでもいい…。』
本当にどうでもいい。本当に正もない。
『書くことがなくなってきたな。』
唐突にそう思った。だが、丁度いい。真面目に志望動機とか書こう。それにしてもこれでルーズリーフの表面だけか…。三十分かかった。