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第26話 鬼族

 私の迷宮の入り口前にいたのは五人の黒いローブを身に纏った人達だった。

 そしてアリスの話によれば、私に話したいことがあるそうだった。いったい何だろうと思いながら、玉座に腰掛けて彼らが来るのを待っていた。


「お待たせいたしました」


 アリスのその声と同時に、玉座の間の入り口の重く硬い扉が、ギィイイという音を立てて開かれる。


 ……相変わらず凝っているなぁ。


 でも、相手に舐められないためには、これくらいがちょうど良いのかもしれない。勿論、相手側がそんな態度を取ってきたら、対応するのも面倒だから殺すけれど。

 今は冒険者と王国騎士団の調査の準備で忙しいんだから、それくらい雑になるよ。


 五人はアリスに促されるまま、一歩、また一歩、こちらにゆっくりと歩いてくる。顔が隠れるまでフードを被っていても、ここの光景に魅了されているのがわかった。玉座の間は結構本気で作ったので、このように反応をしてもらえると嬉しい。


 やがて、五人は中央までたどり着き、私を注視した。

 今の私は目を閉じている状態なので、不思議に思っているのだろう。


 あっちから声をかけてくる様子はない。


 ……よし、落ち着け。深呼吸だ、深呼吸。


 ここの主に相応しい態度で、声は緊張で上擦らないように。すーはー、すぅうう、はぁあああああ…………


「ようこそ、私の城へ」


 よっし! ちゃんと言えた!


「君が……いや、貴殿が迷宮の主でよろしいか?」


 先頭を歩いていた人が口を開く。声だけを聞くと、青年っぽいな。

 これだけで女を落とせるんじゃないか、ってくらいのイケメンボイスだ。


「ああ、そうだよ。それで今日は何の用でここに来たのかな?」

「……まず、謝罪をさせてほしい。勝手に貴殿の領域に立ち入ったこと、誠に申し訳ない」


 男の人が頭を下げると、後ろの人達も続いて頭を下げる。


「うん、許すよ。それで、そろそろ用事を聞いていいかな。タイミングが悪いことに、今は色々あって忙しくてね。なるべく速く終わらせたいんだ」

「承知した。……まずは我らが何者か、というところから紹介させてもらう」


 男はフードを退かし、今まで謎だった顔が見えるようになる。

 爽やかな声から想像した通りの整った顔。その顔は今、緊張で固まっているけど、しっかりとした意思がそこからは見えた気がした。髪は燃えるような鮮やかな紅色。ここまでは普通の青年だけど、唯一人とは違くて異様なのは、彼の額から凛々しく伸びた一本の角だった。


「俺はグレンという。見ての通り、鬼族だ」

「鬼族、初めて会ったな。ってことは、後ろの人たちも鬼族だよね?」

「……どうしてそう思う?」

「視た感じ、同じ雰囲気をしているから」

「失礼だが、貴殿は目が見えないのではないのか?」

「ああ、これ? 私は有名人だからね。こうして盲目のふりをしなければ、後々面倒なんだよ」


 そう言って目を開ける。

 グレンという鬼族と、その後ろの連中が息を飲むのが聞こえた気がする。

 黄金に輝く瞳を見たら、誰だって大昔の大罪人を思い出す。

 グレンたちの警戒度がうなぎ登りで上昇していくのがわかる。


「安心していいよ。君たちが私に危害を加えようとしない限り、私は君達を害そうとは思わないから」


 グレンの警戒度が下がる。私が嘘を言っていないのがわかったんだろう。後ろの人達は私の言葉が信じられないのか、未だにこちらを注視している。


 ……いや、訂正。後ろに控えている残りの四人、その内の二人は私を警戒しているんじゃなくて、私の後ろ、こちら側の最大戦力であるレインを警戒していた。


「レイン、もう少し圧力を抑えて」

「ハッ、申し訳ありません。……しかし、セリア様に謁見する立場で、フードを被ったままなのは如何なものかと思います」

「私は気にしていないから、それくらい大目に見てあげな」

「……かしこまりました」


 場に張り詰めていた威圧感が薄れた気がした。


「さて、これで後ろの勘のいいお二人は安心できるかな?」

「……お気遣い、感謝します」

「…………(コクリ)」

「すまない、長旅のせいで部下の疲れも溜まっているのだ。どうか許してもらえるだろうか」


 グレンが目配せして、後ろの人たちもフードを外す。

 誰もが美形で、レインを最後まで警戒していた二人は、片方が武人という印象が一番強い女性で、もう片方が口元を黒マスクで隠した若い子だった。ショートで中性的な顔付だから、見た目だけだと判断が付かないけれど、多分女の子だ。

 この二人は身のこなしが他とは違くて、おそらく先頭に立つグレンより、相手にするならこちらの方が面倒だ。

 残りの二人も女性だった。

 一人は艶やかな黒髪と凛々しい顔が特徴的で、背中に大きな剣を背負っている。多分、とかじゃなくて絶対にそうなんだろうけど、あれを振り回して戦うんだろうな。……レインと気が合いそうだ。

 もう一人は可憐な少女だった。腰まで伸びた薄桃色の髪、巫女のような服に、真っ白な二本の角。真紅の瞳は、私を一直線に見つめていた。……そ、そんなに見られると、照れてしまいます。告白しても────


「──ご主人様ぁ?」

「な、なんでもございません……」


 見惚れていると、横から半端ない威圧がきた。

 うちの従者が怖いのですが、誰か助けてくれませんか?


 ──コホンッ。

 わざとらしく咳をして、再び全員の顔を眺める。


「…………ふむ」


 思えば、グレン以外全員女じゃん。

 くそっ、両手に花かよ。

 しかも全員個性が違って、みんな美人とか。私もあの中に混ざって抱きしめ────


「──セリア様ぁ?」

「なんでもございません!」


 やばい、両方からのプレッシャーがやばい。

 ……そ、そうだよ。こっちだって両手に花なんだから、羨ましがることなんてないよね。うん!


 私は心の中で恐怖に怯えながら、威厳のある態度を演じ続ける。


「うん、許すよ。むしろ、こっちの部下も変に警戒して悪かったね。それじゃあ、これで話が出来るかな?」

「ああ、我らが貴殿の迷宮に訪れた理由、それは──」

『それは妾が話そう』


 不意にそんな声が玉座の間に響いた。

 声の発生源はグレンの後ろ、巫女服の少女の胸元からだった。

 なんか光っているんですけど、大丈夫?


 光はさらに強くなって、玉座の間の全てを埋め尽くそうとしていた。


「うわ、まぶっ!」

「セリア様!」

「ご主人様!」


 光が一際強くなった時、レインとアリスが私を庇うように立ち塞がった。

 そして、光は徐々に弱くなっていき、場には静寂が訪れた。

 二人は光の発生源を見つめて、動かなくなっていた。


「え、なに、ちょっと見えない……」


 従者を手で押し退け──られなかったので、玉座から立ち上がって見える位置まで移動する。


「…………は?」


 そこには一人の獣人がいた。


 獣人にも種類がある。戦に長けた狼人族。俊敏な動きが特徴の豹人族。魔法の扱いでは群を抜く狐人族。

 目の前の少女は狐人族だ。ということは、さっきの光は何かしらの魔法なのか。狐人族は独自の魔法を編み出すから、普通の魔法使いでは到底理解出来ない力を持つ。


「──お初にお目にかかる、魔眼の継承者よ」


 鈴の音のような、聞いていて心地のよい声が、その狐人から発せられる。

 下に向けていた顔を持ち上げ、私のことを真正面から見つめてきた。

 白銀の髪が揺れる。凛々しくもどこか幼げな部分が残った表情からは、何か言い知れぬ気配を感じられる。

 尖った三角のキツネ耳、もふもふのキツネ尻尾。それを触りたい欲求が私を支配するけど、流石にこの場でそれを言う度胸を持ち合わせていない。


 彼女は何者なのか。

 それを魔眼で視ることは容易いけど、それをしてしまったら私の中の何かが壊れてしまう。……そんな予感がした。


「自己紹介からさせてもらおう。妾はマトイ。この世界の──魔王じゃ」


 突如として現れた魔王は、その可愛らしい顔をニヤリと歪ませて笑った。

悲報、完全にストックが無くなりました。

だからって急に毎日投稿を止めるのも読者の皆様に困惑を与えると思うので、事前に報告をしておきます。

2月10日を最後に毎日投稿を停止します。他の作品とのことを考えて、おそらく週一投稿になると思われます。日付は後に活動報告にて知らせますので、続報をお待ちください。

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