〜 蓬髪教師の名前は藤原 滉介 〜
「着きましたわ」
本当にお嬢様かと思うくらい早かった。運動は普通のはずだったが息がすごくあがる。
「ここ……ハァハァ……どこ?」
「写真部ですわ。写真には以前から興味があったのですわ」
確かにドアには写真部と書かてた札がぶら下がっていた。まだ、中に入っていないが寂れてるのが分かる。本当に人がいるのか?
「人いないんじゃ」
「失礼致します」
理華ちゃんは私が言い終わる前にドアを開けた。中には顧問らしき人が1人いるだけだった。
「ごめんね、生徒は皆、外で写真撮りに行ったよ。来ると思わないで」
随分ときっぱり言う顧問は蓬髪で背は普通だが、ひょろひょろしていてひと言で表すと『冴えない』。そんな第1印象を与えた。
「いえ、大丈夫です。また、明日来ます。ほら、理華ちゃん行こう?」
理華ちゃんを連れて戻ろうとしたその時、蓬髪教師が声をかけた。
「待って、どうせなら俺が写真部の体験させてあげるよ! 俺も暇だし、ね?」
部員が欲しいのかすごく必死だった。あまりにも可哀想に思えたのでお言葉に甘えさせてもらった。
「本当? いいの? よっしゃぁぁあ!」
「そんなに部員、少ないのかしらね?」
理華ちゃんが小声で言う。
「理華ちゃん、それ禁句かもよ」
蓬髪教師には聞こえてないみたいでそのまま話を続けた。
「じゃあ、これカメラね。貸出用の一眼レフ。大事に扱ってね」
そう、言われ渡された一眼レフ。しっかりしていて、こんな立派なので写真を撮るのは初めてだ。
「薫子さん、何を撮ります?」
「うーん……。理華ちゃん?」
「私ですか?」
「うん、とりあえず」
なんやかんや、撮らせてくれた。その代わりに私も撮られることになった。
「薫子さん、表情が堅いですわ」
「撮られるから緊張するよ」
すると、蓬髪教師が『薫子の写真撮ってる姿を撮ればいいんじゃないか?』と提案した。私にしてみれば、変わらないと思うが理華ちゃんが乗り気なのでやってみた。以外にも自分の事に集中して撮れたし、理華ちゃんの写真も凄かった。
「二人ともいいセンスしてるな」
「そんなことないですわ」
「ありがとうございます。私一眼レフで撮るの初めてだったから……」
「初めてにしてはすごいよ。そう言えば、自己紹介がまだだったね。俺は藤原 滉介。教科は社会だ。各学年のA組を教えているよ。君たちは何組?」
「私たち、A組です」
「そっか、じゃあ授業の時バンバン指しちゃおうかな? 君たちの名前は?」
「私は本郷理華と申します」
「あ、あのSELECTAGEの社長さんの娘さん? しかも君、入試1位だよね? すごいねぇ。きみは?」
「あ、私は藤宮 薫子と言います」
「あ、君も知ってるよ。入試3位だったでしょ? それで、社会は1位だったよ! 社会の先生としては嬉しいなぁ。歴史好き?」
「あ、はい。好きです」
「そっかぁ! 俺も歴史1番好きなんだよ。よぉし! 薫子の事バンバン指しちゃおう」
藤原先生はイタズラぽく笑ってて楽しそうだった。冴えない先生だが、どこか癒されるような気がして見ていて楽しかった。
寮に帰って荷解きをしながら理華ちゃんと写真部について話した。
「なんか、藤原先生変わってるけど面白いね?」
「私はあの、蓬髪を何とかしてほしいですわ。でも、いい先生なのは確かですわね」
「どうですか? 写真部に興味が湧きましたか?」
「うん。理華ちゃんのおかげだよ。ありがとう」
「お礼を言うのは私の方ですわ。私のわがままを聞いていただいたんだもの」
今日はドタバタした1日だった。明日は理華ちゃん以外にも友達ができるといいな。私はそう思いながら、ベットに入って眠りについた。