7話
6話も同時投稿してるので気をつけてください
受付嬢にムカついたからオークに八つ当たりする
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オークは俺が通って来た森とは違う森にいるらしい。ホープの街は周囲を森に囲まれているから初めてだと迷いやすい。
俺は西の森から来たが、今から行くのは北の森だ。不思議なことに生息するモンスターはきっちり分かれているらしい。
北はオークやオーガなどの中型から大型の亜人系。
東はコカトリスやサンダーバードなどの鳥獣系。
南はシャドウリザードやバジリスクなどの爬虫類系。
西はゴブリンやコボルト、ウルフなどの小型のモンスターだが、あのキラーウルフは例外だな。
今回は北の森なので中型から大型の亜人系モンスターが生息していて、亜人系は道具を使う点が共通している。
「オークの部位は鼻……か」
3つで1Pらしい。頭を潰したらカウント出来ないな。先に鼻を切り飛ばしてから潰すのはアリだな。
北の森は西と違って木々の間に余裕がある。通りやすいがモンスターに見つかりやすい。
「俺の場合は見つかっても問題無い。むしろありがたい」
俺は防御型の魔道士だから余り動きたく無いんだ。ラナやザールはアホみたい突っ込む攻撃型だ。セレスは徹底してサポートだったな。あの頃は楽しかったなぁ。
「お?あれオーガっぽいな」
遠目で見ても2.5mはある。オークにしては大きいからオーガだろう。オークは大きくても2m超える程度だ。
「俺に気付くか?先に罠を張って気付かせよう」
オーガとの間の地面に魔力の種を蒔く。踏むとアーススピアが足を貫くぞ。よし、石を拾ってオーガに投げる。
『ガッ。?』
命中した頭をさすりながら周囲を見渡している。お、目があった。
『ガァアア!』
一気に頭に血が上ったようだ。頭から湯気を出しながら近付いてくる。
「あーあー、足元がお留守なんだよな」
オーガが魔力の種を踏む。アーススピアがオーガの足から肩までを貫いた。
『ガァ!ァアア……』
ほぼ即死かな。ぐったりして微動だにしないオーガに近付く。図鑑を開いて部位を調べる。
「角かぁ、角は錬金の素材にも使えるんだよな……提出はしないでいいか」
オーガの角は意外と希少なので提出はしないと決めた。1本で1Pらしいがオークを3匹狩る方が楽だしな。オーガの死体をアイテムボックスに収納して、改めてオークを探す。
「意外といないなぁ。足跡はあるし森にはいる筈なんだよな」
さっきからチラホラ足跡や食事の跡が見られるから近くにいる筈なんだ。
「——か!助けて!」
助けてという声が聞こえた。女の声みたいだな。最近変な女としか知り合ってないからまともな奴に会いたい。まともなら男でもいい。
声のした方に走る。新しい戦闘の跡とオークの死体が多くなってきた。
「時間をかけ過ぎて仲間を呼ばれたな。未熟すぎる」
オークは見た目のわりにオーガより頭が良い。罠を張ったりはしないが、仲間を呼んだり待ち伏せしたりはする。今回もそんな感じだろう。
「助けて!」
状況は切迫しているようだ。助けを求める時点でギリギリか。
見えてきた。剣士の少年と2人の女がオークの群れに囲まれている。女は魔力切れを起こしたのか立てないようだ。まずは包囲を抜けさせてやるか。
「悪魔の穴。岩雪崩」
包囲の一番厚い場所のオーク達を穴に落とし空中に生み出した岩を落として埋める。
「え……」
何をぼーっとしてるんだあいつらは。
「死にたくなければこっちに来い!」
思わず叫んでしまうが、何匹かのオークがこっちに注目したので結果オーライだな。
「はい!行くよ!」
少年が女2人の手を取って引っ張って来る。1人だけで逃げて来ないのは感心だが足手纏いは置いて行く覚悟も必要だぞ。今回はフォローしてやるけどな。
「アーススピア」
棍棒を振りかぶるオークの顎を槍が貫く。ギリギリで鼻は潰していない筈。
「すごい……ワンワードであんな強い魔法を使うなんて」
「助かった……の?」
「はぁはぁ」
俺の後ろまで逃げてきて座り込んだか。だが男はまだ余裕がありそうだな。
「お前、まだ動けるか」
「はい、手伝います」
いや邪魔だから早く遠くに行って欲しいんだが。
「いらん、2人を連れて街に帰れ。殆どのオークはここに集まっている筈だ」
「でもそれじゃ!」
「荷物は要らないんだ。そこの女2人は戦え無さそうだぞ」
見ると女達が顔を伏せる。肩が震えているのは怒りか恐怖か……どっちでもいいか。
「大地の抱擁」
警戒しながらジリジリと近付いて来ていたオーク達の全身を土が覆う。仲間に壊して貰わないといずれ窒息するだろう。
「早く行け」
「ありがとうございます。逃げるよ2人とも」
「はい」
「分かった……」
3人が走り去る。よし、邪魔者が消えたから今から八つ当たりタイムだ。
「さてと、頭は守れよ。俺のためにな」
手始めに自分の右腕に錬金で巨大な鋼鉄の腕を纏わせる。関節は人形の様に球体では無く、魔力の糸で擬似筋肉を作ることでスムーズに動かせる。
「巨人の鉄槌!」
オークの群れに飛び掛かりながら腕を振り抜く!
複数のオークを殴り飛ばして着地する。直撃した奴らは即死か。不運にもかすった奴は抉れた体を押さえて悶えている。
「巨人の一閃!」
反動で左に伸びた腕に巨大な鋼鉄の剣を握らせそのまま右に振る。回避できなかった20匹以上のオークは腹から真っ二つになった。その凄惨な光景を見て、生き残ったオークは散り散りに逃げ出した。
「いい感じにストレス解消出来たし、深追いはしなくていいか」
深追いは思わぬ被害を招くこともある。無いとは思うがこの先に罠があるかもしれないと仮定して踏みとどまる。
剣と腕を消して剥ぎ取りと収納を始める。残念ながら何体かは鼻が潰れていて剥ぎ取れなかったが一応死体は回収した。
「あいつらの分も回収してやるか」
さっきの3人組が頑張った分も回収してやる。別に悪感情を抱いている訳じゃないしな。
「点々としてて面倒だなぁ。手数料貰うか」
1P分は貰おう決めて回収していく。
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剥ぎ取りを始めて1時間ほどで終わった。全部で73体。あいつらの分の25体から2体分貰おう。これで25Pか……GPは繰り越されたりするのか?
その後、滅茶苦茶になった森をある程度整地して町に帰る。気付けばもう日が沈み始めている。早くヒメに会いに行かなければ。
門番にカードを見せて『エキドナ』に急ぐ。
「ヒメを返せ!」
「何だクライスか、それだと僕が悪い人みたいじゃないか……」
「そんなことどうでもいい。ヒメを渡せ」
「そんなことって、この親バカは全く」
客に対する態度では無いな相変わらず。
「はい、一応濡れタオルで毛並みは整えたよ。どう?」
ヒメを抱き上げる。モンスター故かすでに毛が生え始めている。毛並みを整えたと言っていたが確かに心なしかヒメも満足そうだ。しかし……
「成長が異常に早いな。産まれたばかりだぞ」
「だよね。それに普通のキラーウルフとは毛色も違うんだよ」
「産毛も雪の様だったが、成長して黒になる訳じゃないのか?」
「鳥獣系は羽の生え変わりで変わったりするけど、獣系だからそのまま白銀になると思うよ」
俺が全身黒だからヒメが白いと良いバランスじゃないか。
ヒメをカウンターに下ろして顔を近付けると口元を舐めてくる。目は開いてないから匂いで分かるみたいだ。
「いいなぁ、それ僕にはしてくれないんだよ」
「はん!どうせお前の変態性を感じ取ったんだろうな」
「な!今日会ったばかりのレディーによくそんな事が言えるよね!」
ギャーギャーとフラウと騒ぐ俺の手にヒメが尻尾をサワサワしてきた。
「くふっ!」
サワサワされている手はカウンターに乗せたまま膝から崩れ落ちる。
「なぁ!?羨ま死……」
物音が聞こえたからフラウも撃沈したようだ。
ヒメはアホなことをしている俺たちには興味なさそうにあくびをしていた。