5話
4話目と同時に投稿しましたがあらすじで内容がわかる人は読まなくても大丈夫です
キラーウルフの親を埋葬した
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ウルフにはとりあえず牛のミルクを与えたが今の所は腹も下していない。体温も維持出来るようにしているが何があるか分からないから急いでいる。
「あ、あれか。さすがに疲れてきた」
深夜に走り出してから朝を迎えても走り続けたので10時間近く走っていることになる。だがそれも終わりだ、街が見えてきた。キラーウルフは揺らさないように速度を上げる。
門に着いた。門番らしき男が2人立っている。
「冒険者か?カードを見せてくれ」
アイテムボックスからカードを取り出す。
「その歳でFランク?まぁ、頑張れよ」
哀れむような目を向けられた。ムカついたが今はやることがある。命拾いしたなこの野郎。
ムカつく門番にギルドの場所を聞いて走る。自分でも驚くほどにこのキラーウルフの子供に惹かれている。
ギルドに着くとすぐに中に入る。冒険者は依頼に行っているのか少ない。早足で近付いてキラーウルフの子供を受付に乗せる。
俺から離れて不安なのか尻尾を丸くして牙を見せている。背中を撫でてやると口を閉じて耳を伏せた。
「あの〜どういったご用件でしょうか」
「テイムしていたモンスターが子供を産んだが親は死んでしまった。世話の仕方が分からないから知りたい」
受付嬢に嘘半分事実半分で話す。
「それでしたらちょうどオープンしたテイムモンスター専門店があるんですよ。ちょっとお待ちくださいね」
カウンターの下をゴソゴソしている。
「ありました。ここの地図がお店への道を描いてますよ」
渡された紙を見る。モンスター用の食料やケア用品などを扱っているらしい。ホープの街を好きになりそうだ。
「助かった」
キラーウルフを腕に抱え、礼を言って店に急ぐ。キラーウルフはいつの間にか寝てしまったようだ。
店はギルドから少し離れているらしい。人が増えてきたので走るのはやめて早足で急ぐ。
「ここか。テイム専門店『エキドナ』」
チラシを見ながら歩いて5分くらいか、店構えは普通だが雰囲気が違う。中に入ると店中に飾ってあるウルフやグリフォンなどの獣系のモンスターの絵が目に入る。
「やぁやぁいらっしゃい。初めてのお客さんだよ」
声のした方を見ると笑顔の女がいた。一見人のようだが内包する魔力が多いし魔族に多い青い髪だから魔族だろう。
「キラーウルフ用のミルクとブラシを買いたい。あと大量のタオルもだ」
「キラーウルフの子供をテイムしたの?ちょっとだけ見てもいい?サービスするから」
特に断る理由も無いので腕に抱いたキラーウルフ子供を見せる。そういえばそろそろミルクを飲ませる時間だ。
「これは!か、可愛い!」
女が目の色を変えて興奮し始めた。息が荒いし危ない感じだ。隠すように抱き直す。
「あぁっそんなぁ〜。ねぇ、絵だけでも駄目かな?」
縋るように腕を掴んでくる。ちょっと怖いな。
「そろそろミルクを飲ませる時間なんだ。早く用意しろ」
「じ、じゃあミルクはタダであげるから僕が飲ませてもいい?」
「抱くのは許さない。俺が抱いているからミルクだけ飲ませろ」
妥協案を提示する。これでもかなり譲歩してるんだぞ。
「えぇ〜、うーん。分かったよぉ」
少し悩んだようだが渋々と言った様子で哺乳瓶にミルクを用意してきた。
「じゃあいくよ」
怖い、目が血走ってる。何か感じ取ったのか威嚇するように唸ったのでフリーの右手でお腹を撫でてやる。どうやらリラックスさせられたようだ。
「羨ましい……」
呟くながら哺乳瓶を口元に近付けている。一生懸命ミルクを飲むキラーウルフに俺も女も顔が緩んでしまう。
「「か、可愛い」」
ミルクはすぐに飲み干してしまった。後で排泄も手伝わないとな。
「ねぇねぇ、ウンチのお手伝いも僕が……」
無言で睨む。
「くっ、この親バカめ」
親バカは関係ないだろ。というか客に向かって馬鹿とはなんだ。
「さっき頼んだ物を準備出来たらやらせてやる」
「ほんと!?すぐに準備してきます!!」
神速の動きでどこかに行ってしまった。青い髪が残像になってカッコよかったな。
5分程で女は帰ってきた。
「はぁはぁ、これがミルク。これがブラシ。はぁはぁ、でこれがタオルね。はぁ〜疲れたぁ」
息も絶え絶えに商品を並べていく。手に取って確認するが良いものっぽいな。
「いくらだ」
「ミルクが銀貨5枚でブラシが金貨7枚、タオルが全部で金貨1枚だから……」
「ミルクは一応2つ貰う」
「そしたら金貨8枚と大銀貨1枚だね」
言われた通り支払う。
「それにしてもこのブラシ高いな。なにを使ってるんだ」
「龍の髭だよ。一応サービスしてこの値段だからね。本来だったら大金貨が数枚必要なんだから」
それを金貨7枚は頭おかしいだろ。
「あ、今頭おかしいとかおもったでしょ。ノンノン、その子にミルクをあげられたから相殺だよ」
こいつ………本物だ。本物のバカだ。
「また失礼なこと考えてるでしょ」
「あぁ、本物のバカだと思った」
「正直すぎるよ!」
それから女から世話の仕方や体調管理についてレクチャーを受けた。知識も本物らしい。
「分かった?えーと、名前なに?」
「クライスだ。よろしくな変態」
「へ、変態とか言うな!フラウっていう名前があるんだから」
女の名前はフラウと言うらしい。割とどうでもいい。
フラウと話しているとキラーウルフがモゾモゾし始めた。
「ん?そろそろか」
「僕!僕がやる!」
きっちり挙手までしてアピールしてくる。はぁ、やらせてもいいか。
「ほら、あんまり強くするなよ。何かあったらタダじゃ済まさないぞ」
「うわ、この親バカ目が本気だよ」
当たり前だ。何かあったらブラシをさらに値引きさせてやる。
排泄が終わった後も色々話した結果、とりあえず目が開いて歩けるようになるまでこの街に滞在することになった。あと名前も付けるように言われてしまった。
「家畜とは違ってモンスターは魂の繋がりを大事にするから名前は重要なんだよ」
家畜に失礼な気もするが目が本気だったので嘘では無いんだろう。
「可愛いからヒメとかでもいいんだが……」
「意外と普通に可愛い名前つけるんだ」
うるさい!こいつ客に喧嘩売りすぎだろ。
「ヒメでいいか?」
腕の中でリラックスしているキラーウルフに顔を近付ける。口の周りを執拗に舐めてくる。
「くそっ!見せ付けやがって!」
フラウがなんか言ってるが無視。でも名前はヒメで良いらしい。
「フラウ、俺が依頼で出てる間、本当にヒメの面倒見れるのか?」
「命を賭してお世話します」
不機嫌そうな顔から真面目な顔に切り替わるのが一瞬だった。不安だがモンスター愛は本物のようだし大丈夫かな。
もし「あらすじの意味が分からない」とか「短いあらすじでは役に立たない」と思ってた方、たまに真面目なあらすじもあるので覚悟しろ(?)