14話
前回の前書きの続きです。主人公はオーストラリアのクバーピディから北に向かっているものと思って下さい。
蛇は豚を呑み込みバカは服でスープを食べる
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瞼の上から光が差し込み目を覚ます。
「朝か……ダル」
後頭部をガシガシとかきながら1階に下りる。
食事の後、クルウとそのアタマの上でうつ伏せになって寝ていたヒメに布団をかけて、俺は2階でフラウは1階の寝室で寝た。
「ヒメ〜、クルウ〜?」
食事した部屋を覗く。
「ハァハァ、ヒメちゃん可愛いよヒメちゃん」
そこには塒を巻いたクルウとその中にいるヒメ、そして変態がいた。
「離れろ変態」
安物の杖でブン殴る。
「あて!ちょっと朝っぱらからやめてよ」
「こっちのセリフだ」
ブツブツと文句を言うフラウの手元には紙と筆がある。絵か?もしかして店に飾ってある絵って……
「店の絵もお前が描いたのか?」
「そうだよ、その絵をギルドに売ってお金稼いでたんだ」
趣味と両立出来て最高だよと満面の笑みで離す。へぇー、意外と凄い奴なんだな。ある意味凄い奴とは知ってたけど。
「じゃあこの図鑑の絵はお前のか」
パラパラと図鑑をめくると幾つかは挿絵がある。
「そうだよ、冒険者の護衛をつけて描きに行ったり、綺麗な状態の死体を参考にね」
「なんか……嫌だな」
「どういうこと!?そこは『へぇ〜フラウって優秀なんだな』とか言うとこじゃないの!?」
煩いし似たようなことを昨日もしただろ。
「だって多分図鑑を見るたびにお前の馬鹿面思い出すぞ」
そしてその度に笑いそうだ。
「何なら自画像描いてやろうか?夜のあれに使っても良いよぉ」
ニヤニヤしてるが女が自分から勧めてくるって頭大丈夫か?平民はみんなこうなのか?
「分かった。呪いのやり方を勉強してくる」
「僕の絵で何するつもりだ!ナニをしろよ!」
余計な事を言わずにギルドに貢献してることだけ聞けば良かった。
「はいはい分かった分かった。飯食べよう」
「そうだね」
フラウはしれっとテーブルに着いた。本気じゃなかったか。
クルウにはオークを出してヒメには竜肉を出してやった。クルウは頭から丸呑み、ヒメはヒメでがっついている。
「僕はこれ?」
「俺と一緒だろ。文句言うな」
俺達は黒パンと昨日フラウがぶち撒けたスープと同じものを食べる。フラウは文句言ってるが平民が食べれるようなものじゃないぞ。
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「ふう、美味かった」
「僕も竜肉食べたいなぁ」
フラウは無視して従魔達に近寄る。クルウの膨らんだ腹をヒメが不思議そうにペシペシ叩いている。仲が良さそうで何よりだ。まぁどちらも大人しい種だからな。
『?』
『……』
ヒメがクルウの上に乗って歩き回ったも身動ぎ一つしない。なんて心の広い奴だ。
「じゃあ僕は店に出るから、お昼の時は呼んでね」
そういえばここ店だったな、忘れていた。
だがこれで気兼ね無く従魔達と遊ぶことが出来る。何をするでも無く見ていたらクルウが尻尾を動かしてヒメを捕まえた。どうするつもりだろう?
「え、なに?」
そのまま俺の方に押し付けてきた。さすがに邪魔だったのだろうか?だがヒメは楽しそうだ、遊んでもらっていると思っているのだろう。
完全に目でこちらを認識しているヒメをクルウから受け取って床に下ろすと、クルウの横でヘソ天で寝始めた。クルウも体を動かしてヒメの周りを囲んだので怒ったりはしていないようだ。
「まるで兄妹だな。いや、クルウはまだ分からないか」
クルウの体を枕にして眼を閉じる。ヒメが大きくなったらヒメも枕にしてみたいな、フワフワヌクヌクで良く眠れそうだ。