10話
気が付いたら構想と違う方向に進み始めてしまいました。勢いやノリで書くからこうなるんですよね^ ^
フラウは貧乳?品乳?
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エキドナを後にしてギルドに来た。オークの討伐依頼の報告のためだ。昼は少し過ぎたがギルドの中には昼食をとる冒険者がいるみたいだ。少なくない視線を感じながら受付に行く。
「依頼が終わったから確認してくれ」
依頼書とオークの討伐部位である鼻を75体分置く。その鼻を見て男の職員が眼鏡の奥の目を丸くした。なんか面倒ごとに巻き込まれそうな予感……
悪い予感というのは的中するものだ。職員は俺に待つように言うと、オークの鼻をトレイに乗せて何処かに行ってしまった。注目する視線が痛い。ヒメはストレスを感じていないだろうか?
腕の中にいるヒメを見るがリラックスしてヘソ天の状態で眠っている。可愛いが無防備過ぎやしないか?
「お待たせしました。少しお話があるのでこちらへ……」
戻ってきた職員はろくな説明もせず何処かに連れて行こうとする。まぁ行くけど。
受付横の階段を上がって廊下を進むと突き当たりの部屋の前で止まった。
「失礼します」
職員は1人で中へ入ってしまった。
「は?普通俺も入れるだろ」
ムカついたのでノックもせずに中に入る。
「……」
沈黙している男と信じられないものを見たという表情の職員。俺もお前のこと信じられないわ。
「お前がクライスだな?」
「そうだ、俺を呼んだ理由は?」
分かっているが一応聞いて見る。どうせオークの件だろう。
「オークの討伐依頼の件と心乃剣の件だ」
心乃剣?あぁ、確かパーティ組めとか言われたやつか。
「オークの件は分かってる。心乃剣は知らない」
俺の言葉にわずかに眉を顰める男。というかこの男誰なんだよ。
「昨日、北の森でオークを狩っていた時に男に襲われたが、オークとの戦いで疲労していたので抵抗せず逃げてきたと報告があった」
その報告をしたのが心乃剣だと言う。あの3人組か……見殺しにすれば良かったな。
「それは虚偽の報告だ。実際はあいつらがオークに囲まれていたのを助けたんだ」
「だがたかだかEランクのお前があれだけ大量のオークを倒せるとは——」
「蔓の束縛」
面倒臭くなったので力の差を見せる。愚かにも立派なオーク材の机を使っていたので、そこから蔓を伸ばして縛り付ける。
「ぐっ!」
「ひゃぁ!」
男は抜け出そうともがき、職員は腰を抜かして倒れてしまった。よく見たら気絶してるみたいだ。
「たかだかEランクに負けるとは情けないな」
ニヤリと笑いながら挑発する。
「暴れてもビクともしないとは……すまなかった、思い込みをしていたようだ。これは普通のEランクでは無理だ」
謝罪を受け入れて男の方は蔓を解く。
「で、お前は誰だ」
「俺はこの街のギルドを任されているクラッグだ。姓はない」
どうやら本部と各支部に1人ずついるギルドマスターというやつらしい。それにしては弱いな。
「改めて自己紹介しようか。俺はクライス、こっちはヒメだ。俺のテイムモンスターだから手を出すなよ」
「手は出さないが……見たことない種類だな」
ギルドマスターも見たことないのか。新種かもしれないな。
「ヒメのことは良い。心乃剣について話せ。場合によっては共同墓地の墓穴を掘って貰わないといけないからな」
どの街にも共同墓地はあるはずだ。
「ちょっと待ってくれ!ミノル達にも確認する」
「嘘の報告をするやつが認めるわけないだろ。あいつらの宿を教えろ、教えないなら探し出して報いを受けてもらう」
「教えたら殺さないか」
「話し合いで終わる可能性もある」
全てはあっちの対応次第だがな。
「一応言っとくがミノル以外は貴族だぞ」
ギルドマスターになら教えてもいいよな。業務上必要なんだ。
「俺も良いことを教えてやろう。俺は四魔の1人、大地公のアービィだ」
2つ名を言わないといけないのは恥ずかしいな。
「大地公!四魔最強の魔道士と言われる大地公だと!?」
「さっき力の一端は見せたはずだぞ」
なんだ四魔最強って。場所によっては力を発揮できないんだぞ。
「本物だとしたら何故あなたがここに」
「詳細は言えないから特命とだけ言っておく。ほら、早く宿を教えろ」
「ミノルが泊まってるのは『陽だまりの宿』です。どうか命だけは助けてやってください。貴族2人はともかくミノルは良い奴なんです」
ギルドマスターが公私混同したら駄目だろ。悪いが判断するのは俺だ。
「その宿はどこだ」
「ギルドのすぐ向かいにあります」
しょぼくれたおっさんなんて見ても楽しくないからさっさと立ち去る。勿論オークの鼻と依頼書は回収させてもらった。ここのギルドは嫌いだ。ヒメが成長するまでここでランクアップする予定だったが、ダラダラして過ごそう。
一階に下りて外に出る、視線は気にしない。
あれだな陽だまりの宿。沸々と沸き上がる怒りを抑えて宿に入る。落ち着いた雰囲気でこんな気分じゃなかったら泊まりたいくらいだ。
「ここにミノルはいるか?」
受付にいたおばさんに話しかけるが、個人名を出してある程度の仲であると思わせる。怒気は隠しているから友人が来たと思うだろう。
「はい、依頼から帰って来て部屋で休んでますよ」
「あの2人も一緒か?」
少し嫌そうに聞く。クラッグが『貴族2人はともかく』と言ったんだ、悪い噂があるに違いない。
「貴族の2人はさっき領主の館に帰ったよ。あんた良いタイミングだったね」
ほらな、やっぱりよく思われていない。俺もムカついている。
「それは良かった。ミノルの部屋はどこだっけか」
安堵した表情を作る。ラナを騙すために色んな表情を練習したのがこんなとこで役に立つとは。
「そっちの通路行って3部屋目だよ」
おばさんに礼を行ってミノルの部屋に行く。お話しようよミノル君。鍵が掛かっていたので、鍵穴に触れて錬金で鍵を外す。金属を砂に変えれば良いだけだ。
「この恩知らずが」
早足で部屋の中に入り、呆然とするミノルの襟を右手で掴み上げる。左手ではヒメが寝てるから静かに済ませよう。
「カッ、ま、待ってください。話を、させてください!」
苦しそうにするミノルをベッドに投げ飛ばす。
「うわっ!」
投げられた勢いのまま向こう側に落ちた。ミノルが立ち上がるまでじっと待つ。
「その、ごめんなさい」
立ち上がると今回の経緯を話し始めた。ミノルの話ではあの2人は姉妹で、最近心乃剣を結成したらしい。今回の件は姉のナターシャが、オーク如きに遅れをとったことを隠蔽するために画策したらしい。
「馬鹿すぎる。俺が帰ってくればすぐにバレるし、貴族として恩を仇で返すのはあり得ないだろう」
よし、噂を広めてやろう。こういうのは意外とセレスが得意なんだよな。腹黒っていうか。
「下手したら馬鹿2人は、いやお前もだな。冒険者の資格を剥奪かもな」
「そんな!せっかく夢の異世界転移が出来たのに冒険者になれないなんて……」
ミノルがこの世の終わりのような顔をする。まぁ自業自得だな。ミノルが良い奴だとしても止めなかったのは確かなんだから。
「自分から言いに行くのと俺から報告するのは印象が違うんじゃないか?」
だが助言はしてやる。俺も鬼じゃないしヒメの情操教育にも悪いからな。
「いや、2人に悪いし……」
は?こいつまだそんなこと言ってんのか。
「そうか、分かった。資格剥奪までの時間を楽しめ」
「え、ちょっと待ってよ!ここは僕の2人を想う優しさに感動するとこじゃないの?」
こいつ頭おかしいのか?毒婦2人を心配するのは馬鹿がすることだ。感動なんてあり得ないぞ。
「その言葉も含めてギルドマスターに報告する。いいな」
「こ、こうなったら!光神鎧!」
聞いたことのないスキルを叫ぶとミノルを光り輝く鎧が包み込む。
「僕のチートを見せてやる!物理も魔法も99%カットする鎧だ」
99%は凄いな。だけど四魔を相手にするには足りないな。
「アースハグ」
錬金で床を土に変えミノルを包む。
「俺を相手にするなら100%カットを持ってこい」
この魔法は窒息させるからカットしても意味無いけどな。
「——!!」
滅茶苦茶に暴れるが意味は無い。腕や足は曲がらないし倒れるくらいじゃ砕けないぞ。だんだん動きが緩やかになってきた。酸欠で苦しいんだろう。
「次があったら敵対する奴は選ぶんだな」
動かなくなったミノルを地面に埋めて錬金で元の床に戻して、素知らぬ顔で受付に戻る。
「あら、もういいのかい?」
最初に防音の魔法をかけていたので気付かれていないみたいだな。
「いなかったんだよ、待っても来なかったから今日は帰る」
「あら、おかしいねぇ」
うんうん唸るおばさんは放置してクラッグの所に向かう。先に証文を書かせればよかったな……