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仕事なので勇者探します  作者: 新町新
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1話

初めまして、新町新(あらまちあらた)と申します。稚拙な作品ではありますが時間のある時にでもお読みください。

 

「あ〜よく寝た」


 半開きの目を擦りながら上半身を起こしてベッドから足だけを下ろす。チャリンとネックレスが音を立てる。


 なんとなく見渡すがベッドと窓しか無い牢獄と言っても差し支えない俺の部屋だ。窓の月明かりが部屋の中を明るくしてくれる。


「そういえば今日は会議があるとか言ってたな……」


 王宮で何か会議をする予定だった筈、時間を確認したら2時間は遅刻しているようだ。


「とりあえず出仕するか」


 立ち上がって着替える。王宮に出仕する時は色々決まりがあるらしいが俺はいつも全身黒だ。


「まずは何の会議だったのか確認しに行こう」


 出仕するとは言ったが俺の部屋は王宮の中にある。部屋を出ればそこはもう王宮だ。職場まで徒歩1分も無い。


「おい、ラナはどこにいる」


 足を止めて頭を下げていたメイドに声をかける。ラナとは四魔の1人で火属性を得意とする女だ。ちなみに俺は土属性だ。


「ラナ様は火の間の会議に出ておられます」


「他の奴らもいるのか」


「はい、筆頭魔道士様も参加しておられます」


 他の四魔である風のザール、水のセレスに加えて筆頭であるビンセント様もいるらしい。結構重要な会議みたいだな。


「火の間……行くか」


 王宮には幾つかの部屋がある、それぞれの属性の名前の火・水・風・土の間と謁見の間がある。


 火の間、主に会議に使われる部屋だ。遠く無いのですぐに着く。火が描かれた扉を見上げる、3mくらいあるが以外と軽く開ける事が出来る。


 中から声がするが軽くノックだけして入る。中には円卓があり7つ席があり、上座は空席で時計回りにビンセント様、ラナ、ザール、セレスが座っている。


「寝坊した、許してくれ」


 適当に謝罪しててセレスの隣に座る。


「アービィ様、国の魔道士の頂点であることの自覚を持ってください」


 四魔唯一の女魔道士のラナに注意された。他は諦めているのか何も言わない。


「分かりました。それで何を話していたんだ?」


 ラナが睨んでくるが気にしない。


「最近人間たちの国が騒がしいので調べさせたのだが……どうやら勇者を呼び出したらしい」


 ヴァンパイアのザールがその女みたいな顔を歪めながら話す。人間の国であるアンセム王国が勇者を召喚したらしい。


 文献では約五百年前に勇者召喚がされたらしい。その時は人間と俺たちは敵対していてその対抗策だったようだ。


「だがザール殿の情報は事実だろう、私のところにも同じ報告がされている」


 エルフであるセレスにも勇者召喚の情報がいっているらしい。俺は諜報部隊どころか部下もいない、俺以外の土属性の魔道士はほかの四魔の派閥に入っている。おかしい。


「アービィ、お前はこの件どうする」


 筆頭魔道士であるビンセント様に問われた。どうするとはどう言うことだ?俺に何かをして来いということだろうか。


「そうですね、直ちに勇者を調べます。勇者の性格や能力、我らに敵意があるのか」


 ビンセント様には大恩があるから出来るだけ丁寧に話す。俺の言葉にビンセント様が頷く。


「サージャント王国の単体最強戦力であるお前には期待している。だが身分は明かすなよ」


「必ずやご期待に応えてみせます」


 立ち上がらず座ったまま頭を下げる。俺はビンセント様に恩を感じているが、ビンセント様は俺のことを煩わしく思っている節がある。身分を明かすなということはエルビム王国とは無関係を装えということだろう。


「これで会議は終わる、クライスは準備を急げ」


 再度頭を下げて退室する。


「アービィ、頑張れよ」


「アービィ殿に精霊の加護があらんことを」


「ま、死なない程度に頑張んなさい」


 外に出るとザール、セレス、ラナの順に声を掛けられた。ザールは肩を叩いたりと相変わらずヴァンパイアとは思えないようなフランクさだ。セレスは本気で心配して祈ってくれているようだ。ラナは公務が終わったので猫を被るのをやめたようだ、身内だけの会議なのに猫を被る必要あったんだろうか?


 この3人とは歳や種族はバラバラだが仲が良いと思っている。だからいつも通りに返す。


「俺より弱いお前らに心配されるとはな」


 ザールとセレスは苦笑いしたがラナにはローキックされた。魔道士とは思えない良いキックだ。脛を押さえてこちらを睨んでくる、レガースを錬金していたので相当痛いだろう。


「あんた……覚えてなさいよ」


 低い声で脅してくる、涙目だから怖さ半減だな。ザールは笑いを堪えて肩を震わせてセレスはラナに治癒魔法のヒールをかけている。


「自業自得なんだからほっとけばいいのに」


「元はと言えばあんたがっ!!」


 まずい、口に出していたようだ。ここは逃げ一択だな。ラナの両足を繋ぐように鉄を錬金する。


「これ以上立ち話してると怒られそうだから勇者探しの旅に出発するわ」


 気付けば10分近く話していた。貴族連中に見られたら色々言われてたな。


 3人に別れを告げて王宮を出る。部屋には戻ってない、どうせ荷物も無いからな。


「まずは食料と水、馬もいるな」


 そうとなれば街に出る必要があるな。何年ぶりだろうか。


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