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空色パレット、海色キャンバス  作者: FRIDAY
参 無色透明
31/33

走れ、間に合え


 走る。


 全力で、誰もいない廊下を疾走する。

 目指す場所は定まっていない。ただ、視線は忙しくそこら中に走らせる。

 俺が美術室を空けて自分の教室に行っていた時間は、精々五分程度のはずだ。少なくとも、十分はかかっていない。その間に、あの絵はあそこに置かれたはずだ。

 タイミングだ。根拠はないが、このすれ違いはきっと偶然によるものだろう。初めからあの絵はあそこに置いて、置くだけで目的を果たして、立ち去った。俺が一旦美術室を出るのを待っていたのではなく、偶然俺が出ていった直後にやって来ただけだ。


 すれ違いだ。

 だから、まだそう遠くまでは行っていないはず。

 間に合うか。

 間に合え。


 このまま俺が美術部を退部するにしても、すれ違ったまま終わってたまるか。後味の悪いことこの上ないじゃないか。

 走って、探して、考える。

 闇雲に走ってもダメだ。ただでさえ迷いやすいこの校内で適当に走っていたのでは、まず追いつけないだろう。まさかあれを置いてダッシュで走って帰った、ということもないはずだから、歩きの速度で――

 というか、まずどこへ向かったのかを考えるべきか。


 どこだ?

 考えろ。

 教室か。

 職員室か。

 いや、違う。

 絵を置きに来ただけなら――


 全力でブレーキを掛ける。あまりにも急だったために思いきり足首をひねりそうになったが、とにかく止まった。

 場所は二階、渡り廊下。

 開いていた窓から勢いよく身を乗り出す。

 そこは奇しくもちょうど、生徒玄関から校門までが一望できる位置だった。


 見る。


 既に下校の時間は過ぎていて、下校しようとしている生徒はいない。もう帰ったか、部活動に参加しているか、だ。だから、そこにある人影が答え。

「…………!」

 沢城先輩――!



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