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空色パレット、海色キャンバス  作者: FRIDAY
弐 混色交錯
19/33

いきなり

「私が今ここで君に『永遠の青』について教えることは簡単だ。そしてそれで君は満足して、君の物語は終わる。解決する。けれど私は、思ったわけだ。どうせなら、そのついででいい、小春のことも助けてほしい――」大宮さんは、首を横に振った。「――違うな。助けて、なんて言葉はおこがましい。小春はそんなこと思ってなんかいないだろうし。だからこれは、私の勝手な願いだ。小春を、変えてほしい」


「……変える?」

 俺は訊き返す。

「それは、沢城先輩に青を使うようになってほしいということですか」

「そう。そういうこと。私にはできなくて、でも君にならできるかもしれないこと」

「……わけがわかりません」

 俺は吐息する。


「大宮さんが俺に何を見たのかわかりませんけど、俺は誰かを変えられるような人間じゃないです」

「いやいや、そんなことはないよ。人は人の中で変わっていくもの。誰かは誰かを変えていってしまうものさ。望むと望まざるとに関わらずね。そして君は、小春を私の望む方向へ変えてくれる人材とみた」

「何を根拠に」

「女の勘かな」

 さらっと言うが、それは無根拠と同義だろう。よく聞く表現ではあるが。

「でも、よく当たる直感だ」

「…………」

「まあ、聞くだけ聞いてよ。それが『永遠の青』と関係があろうとなかろうと、悪いようにはならないし――それに、何となくだけど、ここで私が教えなくても『永遠の青』についてはもうすぐ明らかになるんだろうし」

「それも、女の勘ですか」

「うん、そう」


 俺は深くため息をついた。わざわざここまで、恥を忍んでメイド喫茶に入ってまで、収穫はなし、か。わざわざ沢城先輩に店番を頼んでまで、とんだ無駄足。


 いや……でも、どうなんだろう。

 正面でにこにこと笑んでいる大宮さんを見る。

 本当に、全く関係のない話、なんだろうか。

 俺が『永遠の青』について調べているという話を聞いて、その上であえて沢城先輩の話をする、という。その関係の有無について大宮さんは肯定も否定もしていない、が。


 ……関係が、あるのか?

 だが、やはり迷いもする。

 ことは沢城先輩の話だ。

 それを、当人のいないところでするというのは――


「それじゃあ、話そう」

「え、ちょっと待って下さい」

「小春が青を使わなくなった話だ」


 俺の制止を全く聞かず、にこにこと大宮さんは話を始めてしまう。

「大きな原因は、小春の母親が亡くなったことにある」

「……え」

 いきなり、重かった。


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