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イリアの世界  作者: 一集
第一章
4/75

4.弟たちと晴れ舞台

「姉さん、なんでこんなことやろうと思ったの?」


文化祭だとか、体育祭だとか、そんなお祭りがイリアの頭を過る。

あんな風な本気の遊びをしてみたいではないか、まだ子供の今のうちに。


「だって、みんなで何かを一つ作り上げることって楽しいでしょ?」


ニールは否定しなかった。

そして仲間たちも、ニールと違いはない。


最近はとみにこの屋敷に遊びに来ることが多いのがその証拠。

一週間と空けずに来て、共に練習に励む。


「おい、グレン。もう少しでいい、舞台が大きくならないか」

「誠意努力中だ」

「リィンもう少し精霊の小型化に尽力してくれない?」

「考慮しよう」

「シリルは?」

「音採取に行ってる」

「ふーん?」

「間に合わせで記録石を使うことにしたんだと。そのうち声のサンプル採取だとか言ってお前にも迫ってくるぜ、多分」

「ウィル、こっちの魔力が薄い!吸い上げ難い!濃度を上げてくれ!」

「うっせー!言われなくてもわかってるよ!」

「メル、どうだ?」

「構成は出来てるんだけど。ただねぇ、自動追尾と言っても何を追いかけるか。ニールは核を何に設定すればいいと思う?」

「うーん…。おーい、リィン、水の精霊の動きに光が自動でついてくるようにしたいんだけど、精霊に取っ掛かりって作ることは出来ないのか?」

「不純物でも入れろって?ただでさえ不安定な精霊が余計に暴れるだけだと思うが…」

「堂々と言わない!その制御の甘さを少しは反省しろ!」

「イリア、この場面で背景はどう動かしたらいい?」

「そうね、精霊に動きを出したいから遠近法で背景を少しずつ小さくしましょう」


この試行錯誤と、それを誰かと共有することと、何かが形作られていく楽しさ。

何ものにも代えがたい、経験と思い出なのではないかと、イリアは今だから思う。


本当の所は単純に、ニール達だけではない、イリアも同じように楽しかっただけのこと。


「あ、そうそう、発表会の日を決めてしまいたいんだけど、みんなは再来週は時間取れそう?」

「「「…え?」」」


寝耳に水とはこのことだろう。


「姉さん、今、なんて?」

「だから、発表会」

「つまり?」

「この舞台をお披露目する日」

「はあ!?」

「待て、待ってくれ、イリア。この稚拙な遊戯を誰かに見せろと?」

「だって、どうせ完成なんてしないでしょ?なら期間を区切って集中して完成に近づける方がいいじゃない」


確かに、この演目の完成が皆の納得をもって終わるとするならそんな日は一生来ないかもしれない。


「だが見せると言って、一体誰に」

「今度伯爵家の領地の一つに慰問に行くの、いい機会だと思うのだけど」


せめて魔法を見慣れていない平民と聞いて胸を撫で下ろす。

だが、だからといって努力なしの妥協は矜持が許さない。

しかもどうやら時間は少ないようだ。

貴族の子供は思うよりも忙しく、時間に自由はない。


再来週と言うのなら、皆で集まれるのはこれが最後。

突然の宣告に、ごくりと唾を飲み込んだのは誰だったか。


「リィン、来週の予定は?茶会に出たりするのか?」


一番初めに動き出したのは姉の突拍子のない行動に一番慣れているニール。


「ああ、確か辺境伯に招待されていたな」

「それ、おれも行く予定だわ。」


ひらひらと手を上げるグレン。


「よし、グレンとリィンと…ウィルも多分行くだろう?最悪、四人はそこで最後の打ち合わせだ」


ウィルへの質問は確認であって、ウィルの発言を必要とはしていなかった。

その通り、出席の返事は出していたが、決めつけられるのは面白くない。

が、事実を否定する意味も持たず、提案に否やはなかった。


「なら私の家で開く予定のパーティーにメルとランスを呼ぼう。帰ったら至急招待状を送るから返信してくれ。シリルは出席予定だったから問題はないな」

「了解」


さくさくと決まっていく予定にイリアが口を挟む隙はない。

出来ることは、なんだか随分と大きくなってしまったのだな、なんて弟たちの成長を感じることくらいだ。


「とりあえず今日は予定変更だ。通しで何度かやってみよう」

「何があっても流れは止めない方向で行こうか」

「賛成」

「誰かシリルを捕獲してこい」

「アイアイ」


ちなみに通しでやってみた感想は一言。


「う~ん、なかなか」


困ったようにうふふと笑えるのはイリアばかり。


「やばい」

「まずい」

「ひどい」

「イリア!やはりもう少し延期しないか!?」

「ダ~メ!やると言ったらやるのです」


がっくりと項垂れる面々にイリアは声をかける。


「でも、みんなもう課題は見えてるでしょう?」


グレンは結界の歪み、ウィルはスムーズな魔力濃度の変化。

リィンは巨大化しがちな精霊の固定、メルは光の追尾機能の完成。

ランスは精霊を最後まで操るにあたっての集中力、シリルは記録石から流れる声をいかに動き回る精霊が発しているように聞かせるか、セオはリアリティの追求のために実物の観察。


「課題の出来は本番に見せてもらうわ」


厳しい。

と、各々は顔を顰めた。


結局最後の通しまで舞台はうまく回ることなく、不安を残したまま終わってしまった。


あとは自主練ののち、公の場でこそこそと現状確認をすることくらいしか出来ない。

それも機会があるだけまだましと言うべきなのだろう。


実は、この頃から徐々に子供社会でも派閥が形作られていく。

それはほとんど親を踏襲した政治的なものであるのだが、この時代、とある一派がその慣例を少々無視し始める気配を見せていた。


「リィンダネール様、お久しぶりでございます。」


多くの人が少しだけ興味を引いてしまうくらいには珍しい組み合わせが庭園で挨拶を交わしていた。


「これはこれはウィルヘルム様、どうぞ顔をお上げになってください、斯様な挨拶は若輩者の私には不要でございます」

「いいえ、リィンダネール様の名声は我が領地にも広く聞こえてくるほど、わたしにご謙遜もまた不要でございます」


歯の浮くような会話を交わしながら二人は内心の嫌悪を笑顔で覆う。

これでまだ十に満たない子供と言うのだから恐ろしい。


「どうですか、ご挨拶が終わっているのであればあちらで少しお話でも」

「喜んで。友誼を深めるのもまたこういった会の楽しみでありますから」


ざわめきを優雅に躱して二人は人々から距離を取る。

近寄ったなら、先ほどの会話は幻聴だったのかと疑いたくなっただろう。


「誰がリィンダネール様、だ。気持ち悪い」

「それはこっちの台詞だね、リィンに様付けされるのがこんなに居心地悪いものだとは思ってなかったよ」

「お、きたきた。こっちだリィン、ウィル」


グレンとニールが庭の端から小声で手招きしているのを目敏く見つけて二人は合流した。

ほっと肩の力が抜けたことに二人は気付かない。


「よう、何かいい案は考え付いたか?」

「ああ、リィン水の精霊の核にはこれを使おう」

「魔石?」

「水属性の魔石だ。持ち帰って試してみてくれないか。これで水の精霊が不安定になるようなら諦める。メルには光を自分で動かしてもらおう」

「それは、…大分動きが遅くなるだろうな」

「ああ、だが仕方がない。魔石とリィンの魔法が反発しないことを祈るばかりだ」

「グレンの方は?何とかなりそうなのか?」

「ああ、詠唱が長くなるし魔力消費が大きくなるが、呪文にもっと細かい指定を混ぜ込もうと思っている。固定化を強固に支える手伝いをウィルにも頼んだから大丈夫、…だと思いたい」

「僕が覆う回復範囲の他に、グレンの結界を内と外から支える」

「つまり、ウィルは三重に範囲魔法を広げるわけか」

「出来るのか?」

「僕に出来ないことはない」

「あーはいはい」


他方、低階級の四人も顔を突き合わせていた。


「セオ、君の幻術で音響装置を隠すことは出来ない?どうしても舞台の中央に置きたい」

「背景に紛れ込ませるってことね。難しいな、背景が全くない場面もあるんだ」

「そこを何とか!」

「なら、最初からその音響装置とやらに幻術をかけておくってのはどうだ?自在に体色を変えて森に紛れる動物がいただろう?その要領で」

「ランス!たまにはいい事言うじゃないか!セオ、それさえ助けてくれれば。中央からなら音を完璧に発させてみせるよ、精霊がまるで本当に話しているように」

「ふ~ん、言ったな?ならやってやろうじゃないか」

「私の方は吉報を寝て待つしかないね、リィン様、魔石様、頼んだぞー」

「ランスは?途中で息切れする問題はどうにかなりそうなの?」

「こればかりは何とも。日々訓練。とりあえず四六時中魔力を体内で動かす練習をしてるが、身になっているかはどうにもわからないな」


努力は怠るつもりはないけれど。


「結局ぶっつけ本番か」

「まあ、なるようにしかならないよ」


溜息は重かった。




「さあ、弟たち、準備はいい?今日は日頃の成果を発表する日よ、楽しみね!」


楽しそうなのはイリアばかりというのは最近の通例となっている。

手に持ったバスケットには皆の大好物が詰め込まれていたが、そこから漂う匂いにも反応できない位に馬車の中は暗かった。


「酔った、訳じゃないわよねぇ」


もちろんイリアも彼らの緊張はわかるけど、あまり心配はいらないとも思っていた。

彼らは自己評価が低すぎる。


自分の小さな立体紙芝居を見て目を輝かせていたことを彼らは忘れているらしい。

そう、あの程度であの大興奮。


それが何十倍の大きさで空を舞うのだ。

面白くないわけがない。


かく言うイリアも今から見るのが楽しみで仕方がない。


がくん、と箱馬車が揺れて止まった。

どうやら到着のようだ。


ああ~とかううとか追いつめられた呻き声が聞こえてイリアは深々と溜息をもらした。


「もう、仕方ないわね。とびっきりのおまじないをかけてあげるわ」


さあ、目を閉じて。

イリアは瞼の裏にも見える銀の光を祝福として降り注いだ。


少しだけ緊張緩和の効力を持ったそれに弟たちは知らず息を吐き出す。


「リィン、あなたに魔法を教えたのは誰?」

「家庭教師、…とイリア」

「グレン、魔法は楽しい?」

「ああ、昔は言われることを反芻するだけで面白くもなかったけど、今は楽しいな」

「ウィル?」

「楽しいって言えば満足?」

「セオ、誰も知らない新しい魔法を披露する機会なのよ?」

「そう、だな」

「シリル、自分の魔法に自信はある?」

「もちろんあるよ!」

「メル、誰かと何かを作るのは楽しかった?」

「とても」

「ランス、随分練習したのね、きっとうまくいくわ」

「ありがとう」


イリアは彼らの答えに満足して、最後に実の弟に目を向ける。

彼は、彼だけは最初から目を閉じてはいない。


「ニール、あなたは平気ね?」

「姉さんが居る限りは」

「重畳よ」


にっこりと笑い返せば、自信に満ちた顔が返ってきた。


「さあ、顔を上げて。あなたたちのための晴れ舞台よ」


馬車から降りていく顔を見る限り、もう大丈夫だろう。


この村は王都から少々離れてはいるが治安はいい方で、魔物の被害も殆どなく、素朴な人柄の大らかな性格を持った人が多い。


幾度か、イリアもすでに訪問したことがある。

その時に孤児院の子供たちに例の立体紙芝居を見せたところ大変な人気を博して、それからここの人たちはイリアの訪問に対してひどく好意的なのだ。


伯爵家の馬車を見て、遠くから子供たちがはしゃいでいるのが見えた。


恰幅のいい女性が近づいてくるのを見て、イリアは小さく頭を下げる。

こんにちは、の意味で。


女性は苦笑してイリアたちを歓迎してくれた。


「今日は随分と大人数だねえ、お嬢様。それもこんな子供ばかり」

「ええ、今日は彼らに手伝ってもらいたくて。そうそう、おばさま、今日は広場でやりたいと思うの。見たい人はそちらに集まってくれるように言ってもらえるかしら」

「もちろんだよ、広間なら大人数で見られるね。みんな楽しみにしていたから、こちらから頼みたいくらいだ。すぐに始めるのかい?ああ、あたしも楽しみだよ」


年甲斐もなく心躍る様子の女性が本当に楽しみにしてくれていることがわかる。


「そうね、一時間後くらいから始めようかしら。たくさんの人に見てもらいたいもの」

「まかせなさい、子供たちに伝えれば村の隅々まではしゃいで回るはずさ」


厚い胸を叩いて女性が離れていくのを見守り、広間に移動した。


「ここが舞台かあ」

「グレン、位置と広さをどうする?」

「この辺りに作ろう。観客は向こう側に座ってもらって…ウィルの範囲魔法外の方がいいだろう。どの辺りまで覆うつもりだ?」

「最低これくらいの距離は欲しいな」


てきぱきと動き出すのは裏方二人。

舞台の位置が決まれば、シリルとセオも確認を始めた。


「それが音響装置、ね。言っていたより小さな」

「少しでも負担は減らしたからね。もちろん君の。」

「言ったな」


減らず口のシリルににやりとセオが笑った。


「リィン、確認だ。」

「ああ、昨日試した時は問題なかった。むしろやりやすいくらいだったから大丈夫だとおもうが」

「メルの方は?ちゃんと魔石を追尾するように設定は書き換えてあるのか?」

「抜かりないよ」

「こんなにリィンの魔力が安定するなら火の方も魔石を使うべきだった…」

「今さらだろ、ランス。しっかりやれよ」


イリアは彼らが作り上げる舞台の更に外側をふわりと覆った。

薄い膜だ。

魔力の循環が少しだけよくなる。

万が一の場合は暴走を抑える役目もある。


練習の時はいつも、この結界を展開していたのだけど、ついぞニール以外は気付かなかったようだ。


まあ、これくらいの手助けは許されると思う。


観客が続々と集まってきて、村の子供たちが前席を陣取ろうと押し合っている頃。

イリアが舞台の始まりを告げた。


「これはむかしむかしの物語。人間がまだいなかった頃、原初の世界には精霊が溢れていました」


静寂に支配された空間でイリアの声がよく通った。


「さあ、お集まりの皆さま、幻想の世界へようこそ。つかの間の夢をどうぞお楽しみください」


イリアから舞台へ、目線が移り変わる前に。


どおん、と音を立てて火柱が上がった。

幾人かがその本物の熱に腰を浮かしかけるが、時を置かずに他方に水柱が上がる。


「火と水が踊ってる…」


水がアーチを作れば火が戯れるようにそれをくぐり、炎が滝を作ったのなら水は火花のように弾けて見せた。

二本の柱は螺旋のようにねじれ、空を目ざして駆け上る。


幻想的な二柱の踊り、それが自分たちを傷つけるものではないと村人はすぐに理解した。


空間を彩る水と火は絡み合いぶつかり合い、意志を持って人の目を惹き込む。

これに魅せられないものがいるわけがない。


「う、わああ」

「きれい…」

「すげぇ」


前列の子供の口が開いたままなのを見つけてイリアが笑う。


誰も見たことのない、古の光景がそこにはあった。

神話よりも更に遠い時代の、世界が生まれたころの話。


寝物語に誰もが聞いた、あの世界。

どんな世界だろう。

どんな風景だろう。

どんな者たちだったのだろう。

想像を働かせた幼い頃の記憶そのままの幻想が、目の前に。


水柱から、生まれいずる。

人の形に似て、人ではないもの。


二本の腕と、二対の透明な羽を持った女性体。

心を宿した水が精霊として産声を上げた。


やがて、水の精霊に促されるように、猛々しい炎が意志を宿す。

その手は世界を創造するために太く強く。


世界より生み落とされた、それが原初の二つの生命。


もはや言葉はない。

ただ食い入るように見詰めるのみ。


精霊は心と形を得て、言葉を手にする。

孤独を知って、仲間を増やし、世界が色付いていく。


世界に祝福を。

生命に安らぎを。

枯れていくものにすら安寧を。


精霊の歌が空から零れ落ちる。

歌は細かな光となって村人の上に降り注いだ。


人々の心に沁み渡るように、触れれば溶ける光。


そうして世界は生命で溢れた。


イリアが最後に舞台に虹をかける。

一つ、二つ。

精霊の道をもう一つ。


彼らの世界はやがて目には見えなくなったけれど。

矮小なる人の身で垣間見た幻想は奇跡に違いなかった。




長い静寂にさすがに不安になった。

精一杯やったと思うし、一番の出来だったと思うのだが。


ちらりと仲間と目を合わせた時だった。


怒号のような歓声が耳朶を大きく叩く。

思わず踏鞴を踏むように後退った。


「う、わ」


村人たちが何を言っているのかはわからない。

とにかく口々に何かを叫んでいて、聞きとれないのだ。


熱気と、興奮が辺りを包んで、気圧されるほどの空気がニールたちに底知れない何かを感じさせる。


けれど、多分、自分たちはその意味を正確に理解しているはずだ。


「…やった、んだよな」

「ああ」


言葉は少ない。

言いたいことは多くあるけれど。

村人たち以上に、自分たちを巡る感情がそれを押し込んでいるだけで。


村が揺れていた。

涙を止められない人がいる、感動に胸を焦がす人がいる。

じっとしていられずに駆けだす人もいた。


「すげー!すげーよ!!」

「見たか?見たよな!精霊様かっこいい!!」

「水の精霊様ってあんなにお綺麗だったのね!」

「なんて、なんて素敵なお話なの」


彼らの様子を目に焼き付けるように眺める。

イリアがいつの間に近くにいた。


「お疲れさま」


ぎゅっと抱きしめられてやっと緊張が抜けた。

同時に、押しとどめていた何かも蠢きだす。


イリアが弟たちの目線を追って村人の様子を目に映す。


「どう?」


震える胸に手を当てて、イリアが同意を求めた。


「…人の心を動かすって、すごいことだと思わない?」


無言で首を縦に振る。

何度も。


何だろう、胸の奥に宿るこの熱量は。


「すごいことを、したね」


苦労とか、努力とか、どうして簡単に報われたなんて思えてしまうのか。


村人たちが叫んでいるのと同じ気持ちで、叫び出したい衝動に駆られた。

誰かの心を動かすことが出来る、それで、それだけで、どうして自分に価値があるなんて自信が重ねられるのだろう。


「さすがわたしの弟たち」


それは貴族とか、誇りとか、血脈だとか、権力とか、そういうものとは無縁の、初めて得た自分自身の価値だと思った。


「成功、おめでとう」


こんな単純で簡単な感情に支配されるのも、悪くはない気分だった。


「いぃぃぃやったーーーーー!!」

「成功だああ!」

「うっしゃーーー!」

「やったぞー!!!」

「ざまあみろ!」

「やればできるってもんだぜ!」

「当然だろ!」


みんなでもみくちゃになった日の話。

イリアはただの一つも、彼らの運命を変えたなどと思ってはいなかった。

カタカナとか、現代語は姉の影響。

大体姉のせい。

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