ときめきメモリマス(四百文字お題小説)
お借りしたお題は「得した気分」です。
布貝那実雄。高校二年。通称「不甲斐ないお」。その名の通り実に情けない人生を送って来ていると自覚もしている。
ある日、教室に入ると、自分の席にクラスはもちろん学年全体のマドンナ的存在である蘿蔔綾香が座って、後ろの女子と楽しそうに話していた。
「あ、ごめんね、布貝君」
ニコッとして綾香は席を立ち、女子にじゃあねと手を振って自分の席に戻って行った。
「お前、タイミング悪いんだよ」
後ろの席の女子がムッとして那実雄を睨みつけた。
「ごめんなさい」
何も悪い事をしていないのになどとは決して考えない那実雄は素直に謝罪した。
「それだけじゃダメ。お昼にコーヒー牛乳おごってよね」
女子は更に調子に乗って過度な要求をする。
「うん、わかった」
それでも拒絶しない気の毒なほど不甲斐ない那実雄である。
(あ……)
席に座って気づいた。綾香の温もりが残っていたのだ。
得した気分になった那実雄だった。
続くかも知れません。