だから俺は、あいつがいつも鼻歌歌ってれば良いと思うんだ。
隣に住んでる幼なじみが気になる。
例えば、通学路で偶然一緒になる時。
宿題を教え合う合間。
菓子を作る最中。
気付けばあいつは鼻歌を歌ってるんだ。
「タッマゴさん~を割っりまして~、牛乳さ~んと衝撃の出逢~いっ!」
運命のバニラ~エッセンス~、の件でついに吹き出してしまった。
プリン作ってんのはわかるが、寧ろその歌が衝撃だろ。
「あ! ソレまだ冷ましてる途中なのに!」
「あ。ヤベ」
プリンと共にグラスに入れるスポンジケーキの摘み食いがバレ、撤退。
プリプリ怒るあいつに謝り倒し、たっぷり生クリームの乗ったデザートに無事ありつけた。
焦げを誤魔化すココアパウダーが掛かってる。
鼻歌はヘンだが菓子も料理も得意なんだ。
ソレを食べながらあいつはまたも鼻歌。
聞き取れないけど、フンフンフーン、とご機嫌でスプーンをパクリ。
口角が上がってキラキラした目が、美味しい、と雄弁に語る。
あいつが楽しそうだと俺もつい笑ってしまうんだ。