最後の言葉
「さゆ!」
するとさゆは優しく笑う。
「どうしたの?
こんなに汗かいて」
「さゆ。俺、さゆの願い叶えるよ。」
ほんとは最後の願いかもしれないと思った。
「リト。ありがとう。」
「でもこれだけはきいて。諦めないから。
俺はさゆをはいそうですかって死なせる事はできない。」
「ちがうよ。リト。
そう言う意味でいったんじゃない。
でももし自分がいつ死ぬかわからないなら一分でも一秒でも多くリトといたい。」
「うん。俺も少しでもさゆといっしょにいたい。」
ギュッ
「リト〜。」
いきなりさゆがリトに抱きつくほほには涙がながれている。
「なぁさゆ。
泣き虫になった?」
「そうかもね。リトがいてくれるから。泣けるんだよ。」
そっかぁ。
さゆは俺の側で安心して涙をながすんだな。
それにしてもかわいい子が泣くと絵になるなぁ。
なんて考えながらリトはさゆの背中をポンッとたたく
するとさゆはえへって笑う。
空気がとても和やかになる。
こんな時間がながく続けばいいな。
お願いです。
神様さゆと少しでもながくいさせて下さい。
「山路先生。無理を言ってすいません。
「いや。構わないよ。君もわかってると思うけどさゆちゃんはいつどうなってもわからない。
きちんと心構えをしておく様に。」
あの日から研究は俺以外の人にやってもらっている。
そして週に一回情報をきく。
ハァ…
覚悟ってさゆが死ぬ覚悟だよな。そんなのいつになっても出来ないよ。
最近夢をみる。
俺とさゆが2人で歩いてて急にさゆが届かない場所に行く。
そんな夢だ。
毎日が不安でたまらない。
毎日さゆの事を確かめる様に抱き締めるのも日課になった。
まぁ抱きしめても不安なんだけど…
日課と言えばさゆは最近願いを言わない。
きくと今はない。
それしか答えない。
そんな事を考えながらボーッとしていた時。
急に寒気がした。
その瞬間
ブーブーブー
何度もなるさゆの病室のナースコール。
リトは嫌な気がしてすぐに走りだす。
後ろには山路先生がついてきていた。
少しためらいながらさゆの病室のドアをあける。
そこには苦しそうな顔をしたさゆがいる。
「さゆ。大丈夫か?。すぐに楽にしてやるから。」
俺はこの時のさゆの事を鮮明に憶えている。
「リト…あ…い…してるよ」
これがさゆの最後の言葉だった。