デート
「なぁさゆ。どこに行きたい?」
今日のさゆは私服でいつもの何倍もかわいくみえる。
「うーん。ショッピングとか?」
「わかった。じゃあ行こう」
どこかぎこちない二人の様子。
あと一歩がちぢまらない二人の距離。
「さゆ。これとかどう?。」
「わぁ。かわいい。じゃあ私これにする。」
それからさゆは不安な事を俺にもらした。
「ねぇリト。私たちカップルにみえるかな。」
「大丈夫だよ。みえるよ。」
その時さゆと手があたりどちらともなく手をつなぐ。
そうだよね。
考えてちぢめる物じゃない。
いっしょにいれば自然にちちまるよね。
「リト。今日はありがとう。」
「いいよ。これくらい。俺も楽しかった。」
それになさゆ。
俺はさゆのその笑顔がみられるならどんな事でもするよ。
「リト。私ね。病気になってからずっと病院にいたから、私今日が今まで生きてきた中で一番幸せかも。」
大袈裟だよって思うけどさゆにしたら普通の事が特別なんだよな。
「じゃあ、その幸せをこれからいっぱい体験しよ。俺がさゆの願い叶えてあげる。」
「ほんと!すごくうれしい。ありがとう。」
それから2人は手をつないで病院まで帰った。
「おかえりなさい。さゆ。」
「お母さん。私ね、私ね…」
「話は病室できくわ。」
「うん。」
「じゃあさゆ。今日はゆっくり休んでね。」
「うん。ありがとう。リト。」
「葉山先生。さゆちゃんの様子は?」
「今日はすごくおちついてました。」
「そうですか。よかったですね。」
「えぇ。よかったです。さゆも楽しめたみたいで。行ったかいがありました。それとこれからもさゆの願いを叶えてあげたいんですけど…」
「わかりました。」
「ねぇさゆ。今日は楽しかった?」
「うん。でもちゃんとリトの事も考えてるよ。できるだけリトの負担にならない様にする。」
そして、デートの次の日からさゆの願いを叶えるのが日課になった。
「今日は料理がしてみたい。」
「わかった。俺が教えてあげる。」
「こうやって2人で並んでつくってると新婚さんみたいだね。」
「ほんとだね。」
2人は幸せをかみしめる様に微笑みあった。
そして互いに心の中でこんな幸せが続く事を祈った。
さゆとリトの日課が続いた30日目。
さゆが真剣な顔をしてつげる。
「ねぇさゆとずっといっしょにいて?」
リトは言葉の本当の意味がわからなかった。
「うん。いいよ。」
返事のはやさにさゆはリトが意味を理解していない事に気付く。
「ちがうよ。そういう意味じゃなくて、病気の研究をする時間もずっとさゆといっしょにいて?」
リトはすぐに返事ができなくて、病室を飛び出した。