今
そして10年の月日がたった。あれから俺はさゆと一度もあっていない。
今も君は病院でさみしく過ごしていますか?
一目でいいから君に会いたい。
さゆ…
リト。
今あなたはどこで何をしていますか?
私は今も貴方をまってるよ。
これからも。
ずっと。
リト…
俺は今アメリカにいる。
ここまで来るまでがすごく大変だった。
さゆに出会った頃は、授業にもでてなかったから勉強もおくれまくり。
だから何度もあきらめようとした。
でもそのたびに思い浮かぶさゆの顔。
あきらめたらそこで終わりなんだよな。
だから今の俺があるのはさゆのおかげだ。
中学を卒業して高校を卒業して大学は医学部に通い大学教授に推薦状をかいてもらい、医学をアメリカで学んでいる。
アメリカで学び1年がたった。
「ミスターハヤマ。あなたはどうしてあの病気ばかり研究しているのですか?」
「俺に希望を与えてくれた、女の子の病気を治すためです。」
「そうですか。だったらこの病院へ行きなさい。」
リトは渡された書類に目をとうす。
そこにかかれたさゆの名前。
そして俺たちが出会った病院名。
「ここは、日本で初めてこの病気の専用研究室ができた病院です。ここに行きなさい。」
「ありがとうございます。必ずご期待にそえてみせます。」
「期待してますよ。」
それから一週間後リトは日本へ旅立った。
やっとさゆに会える。
でも俺は…
「はじめまして。葉山先生。この研究室の責任者の山路です」
「えっ。もしかして山路先生?俺です。葉山リト。さゆちゃんの友達の。」
先生は驚いた顔をする。
「リトくん!懐かしいな。君だったのか。でもほんとに医者になるとは…」
「当たり前です。俺はさゆの病気を治さなきゃいけないので」
「そうか。よろしくね。リトくん!」
「はい!よろしくお願いします」
リトと先生は握手をかわした。
「じゃあ早速さゆちゃんの病室に行きましょう」
リトの顔がすこし強ばる。
「さゆちゃん、今日は新しい先生を紹介するよ。どうぞ。」
リトはさゆのベッドに近づく。
「久しぶりだね。」
「もしかしてリト?」
リトが軽く頷くとさゆが勢いよく抱きつく。
「会いたかったよ〜。リト〜。」
あの頃より少し大人び、ますます綺麗になった。
「さゆ、離してくれないかな?」
そう言うとさゆは少し悲しそうな顔をした。
「わかった。いきなりごめんね。」
「いや。別に…」
病室に沈黙が訪れる。
「じゃあ別室でこれからの話をしましょうか」
助かったと思いさゆをのこして病室をでる。
「さゆちゃんのお母さん。これからも特にかわるところはありません。葉山先生きいてますか?」
急に会話をふられ少し驚く。
「えっあ、はい。」
「さゆちゃんの事を考えるのはいいけど話はきいてね」
「はい。すいません。」
話が終わりリトは屋上へ向かう。
そこにはあの頃とかわらぬ何個もかかれたさゆの夢。
そして、さゆに秘密でかいた俺の夢。
どちらもかわらず残っている。
「あっここにいたんだ。リトくん。」
さゆに似た声に驚き振り返る。
そこにいたのはさゆのお母さんだった。
「リトくんと話がしたくて。今大丈夫?」
「はい。」
2人はベンチにすわり話始めた。
「リトくんほんと大きくなったわねぇ。それに大人になって…でもさゆに冷たくなった?」
リトは返答に悩んだ。
「冷たくなったって言われたらそうかもしれません。でもさゆは悪くないんです。単に俺の勝手です。俺、さゆに医者になってさゆの病気治すって言ったのに今の俺には治せない。だから俺はさゆに会う資格がないんです。」
「そうね。リトくんの気持ちはわかるわ。けどね治せなくてもさゆの側にいてあげて。それでさゆは救われるのよ。」
「でも、俺はそんな自分が許せない。カッコ悪くてしかたない。俺は、俺は…」
ヒック、ヒック
あの日からためてきた涙がいまかいまかとあふれる。
「ねぇリトくん。治してくれるって気持ちはうれしいけど、ひとりで溜め込んじゃだめよ。」
今までききたかった言葉を言われさゆのお母さんが戻ってもしばらく一人泣き続けた。
しかし、悩んでいるのはリトだけではなかった。
今までの話をきき、自分がリトを苦しめていたのだと思い屋上のドアの前でさゆはうずくまっていた。
出ていきたいけど行けない。
そんな中途半端な気持ちが2人の関係を壊していく。