奇跡
それからリトとさゆは退院するまで毎日話をした。
話をすればするほどたまっていくお互いを愛する気持ち。
それでも退院は刻々とせまってくる。
「俺さ。明日退院なんだ。」
「そっかぁ。じゃあ明日見送りにいくね。」
「うん。待ってるよ。」
明日が最後のチャンスだ。
さゆにおぼえてもらう。
「ねぇ。お母さん明日私、リトを見送りに行くんだ。おぼえていられるよね?」
悩みもせず笑顔で答える。
「えぇ。きっとおぼえてるわ。」
そして運命の退院の日
「リト〜忘れ物ない?」
「確かめたよ。お母さん。」
リトは病室に感謝をして部屋をでる。
そして手続きを終え玄関につく。
「退院おめでとう。」
そう言って看護師さんや医者がリトを見送ってくれる。
「リト。もう行く時間よ」
「今いくよ。」
もう君とは会えないのかな?
これが最後の別れなのか?
イヤだ。
イヤだ。
もう1度会いたい。
一分でも一秒でも。
そう思い踏み出そうとしたその時。
「まって。まって。リト」
さゆの声が聞こえる。
さゆは朝いつもと同じ様に起きた。
でもいつもと違った事があった。
それは、起きた瞬間涙があふれだしたこと。
とまらない。
そう思っていたら走っていた。
「リト。リト。リト。」
「さゆ。来てくれたんだね。なぁ現実なんだよなぁ。もう一回呼んでリトって。」
「何度でも呼んであげる。リト。リト。リッ」
3回目を言おうとしたその時リトはさゆを抱きしめた。
リトの目から涙がながれる。
「あぁ。めっちゃうれしい。さゆ。俺、今わかった。あの時、真っ暗闇で俺の名前を呼んでたのはさゆの声だ。ありがとう。ありがとう。」
「リト。」
さゆもリトを抱きしめかえす。
「なぁ。さゆ。今度は俺がさゆを幸せにする。俺、将来医者になる。それでさゆの病気治してあげる。それでいっしょに出かけよう。さゆが行きたい所全部。」
そう言うと、さゆはさらに涙をながした。
「ありがとう。リト。私待ってるよ。リトがくるまで」
「あぁ。待ってて」
2人はもう一度強く抱きしめあい身体を離した。
そして、2人はそれぞれの道を歩き始めた。