風鈴の音色が呼び起こすあの夏の別離
夏休みのある日、僕は町内の夏祭りに出かけた。浴衣姿の子どもたちが笑いながら屋台を回り、金魚すくいの水音がポチャンポチャンと響く。僕も小さなすくい網で赤や黒の金魚を掬おうと何度か挑戦した。
やっとの思いで手に入れたのは赤い金魚一匹だった。
家に帰ると水槽の中に移してゆらゆら泳ぐ姿を眺めた。窓から差し込む光と、風鈴の涼やかな音色が夏の訪れを感じさせる。
しかし数日後、かわいがっていた金魚が宙返りをして水面に浮かんでいるのを見つけた。昨日まで元気に泳いでいたはずなのに、突然のお別れが来たことを受け入れられず、ただ水槽を見つめるしかなかった。風鈴の音が、いつもより切なく聞こえた。
翌年の夏には帰省先のスーパーで籠に入ったカブトムシを見つけ、僕は両親におねだりして買ってもらった。家に帰ると、プラスチックのお部屋にカブトムシを入れ、毎日、緑色のゼリーを与えた。
「おいしい?」と声をかけながら、少しずつ減っていく様子を見るのが楽しみだった。
秋が近づく頃、カブトムシも力尽きた。
僕は近くの公園に小さな穴を掘り、そっと埋め別れの儀式をした。
手を合わせ、「ありがとう」とつぶやくと、土の下でカブトムシも静かに眠っているのだと思えた。
風鈴の音は、またあの夏の記憶を運んでくる。僕はそのたびに、彼らのことを思い出す。
あの夏のことは確かに僕の心に刻まれている。




