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プロローグ
「あー、疲れた」
ボスッと音を立てながら、青年はデスクチェアの背もたれに寄りかかる。いたるところに洗っても取れないしみ汚れがついていて、年季が感じられる。
「明日提出の課題は終わったし、そろそろ寝るか」
開けていたパソコンを閉じ、青年はベッドの中へ入る。冬が近づいているこの季節では、布団の中は冷たいが、青年は臆せず頭を枕へつける。どうせすぐ、自分の体温で温かくなるだろうという心持ちだ。
そのまま青年は、普段通り、睡魔の波へ呑まれてゆく。
彼は、とある地方の国立大学3年生。今を全力で楽しみつつ、将来をどうするのか悩み始めている年頃だ。大好きなことを仕事にしていきたいとは思っているが、世間はそんなに甘くないことを知っている。
彼の名前は栗原拓海。
この日を境に、忽然と姿を消した青年の名だ。




