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第二章 第二十五話「いざ海へ!」

早朝。

誰よりも早くにビーチに辿り着こうと息巻く勇人。

だが予想通り、ヴィランダさんも楽しみに待っていた!

後ろから当然の如くマフィンさんも現れ、そして天も白いビキニ姿で現れたのだ!

海って最高ッ!

テンション高まりいざ海へと向かう-。

「先に行くぜぇ!」


さっきの協力する流れはどこへやら、ヴィランダさんは我先にと海に駆けていく-速いっ!


「負けられねぇぇえええええッ!」


遅れて俺も飛び出し、砂浜に足を踏み入れる。

するとすぐに俺の脚は、砂浜に取られて次の足が出し辛くなる。

だが俺は剣を手に入れたい衝動のみで突き動かす。


「オラォァアアアアアアアッ!」


「お?中々の胆力じゃねぇか」


ヴィランダさんは嬉しそうに口角を上げた。

元グラディウスなんて関係ねぇ!

追いつく、追いつく、追いつく-ッ!


「おっと、先に行かせてもらうよ?」


しかし、そんな俺の横を容易に通り抜けていく影が一つ。

マフィンさんだ。まるで地面を舐めとるが如く低い姿勢で追い越していく。

砂浜に足を取られないのかと見れば、軽いのか殆ど足が沈まずに進んで行っていた。


「くっそぉ!負けねぇえええ!」


俺はがむしゃらに手をバタつかせて足を踏み出すも、その差は縮まるどころか離されていく。


「どうしてだ!?俺の方が回転数は多いのに!」


俺の前を走る二人は、系統は違えどどちらもさほど脚を回転させていない。なのに何故か追い付けない。


「フォームに無駄が多いからでしょ」


全力で走る俺の隣に、ヌっと現れたのは天。

おかしい。俺に追いついたというのに息一つ乱れていないなんて。

そういえば街から森へと駆けていく天を追いかけた時、俺は追い付けなかった。


「脚も前に出す。その手の振り方じゃ脚に活かされないよ」


あろう事かダメだしまでしてくる始末。


「追いつきたいって一心のみだから、無駄が出ちゃうんだろうね」


天は「フッ」と蔑んだ目で俺を見やる。


「まっ、単純に遅いんだよね」


「あ、こら!言って欲しくなった事言いやがって!」


ここに来て、筋トレはしてきたが走り込みをしてこなかった弊害が如実に現れる。


天は「じゃ」と軽く手を振って、俺の横を通り過ぎていく。

まるでガゼルのように軽く跳ねて走る天は、砂浜に脚を取られる前に次の足を踏み出して進んでいた。

ちくしょう!これだから脚が早い連中は!


「こんな事なら俺も走り込みしとけば良かった!」


情けなくも俺は女性三人に遅れをとった。

と言っても、もうすぐ海だ。

次々に海に入っていく中、「きゃっ、冷たっ!」や「気持ちいい⋯⋯!」と各々海を堪能する。


数秒遅れてようやく俺が海に到達すると、ほぼ同時に三人が不敵な笑みを浮かべた。


「ビリだったユウトに罰ゲーム!」


そう叫ぶヴィランダさんは、海に入っていく俺の背後に回ると持ち上げる。

足掻くも、横から逃がさまいと天とマフィンさんが支えてガッツリホールド。おかげであらぬ箇所が触れて一瞬、心地良さに身体を委ねる。

それが仇となり、次の瞬間には奥の方へとぶん投げられた。


「おわぁああああ-っ!」


数秒間の浮遊、迫る太陽は暑く、身体は今すぐにでも海に浸かりたいと訴える。

その応えを誰かが聞き届けてくれたように、海へと俺の身体は吸い込まれていく。


ドボンッ!と大きな音を立てて海に入れば、思わず開いた視界に綺麗な海の世界が広がっていた。

辺りには、まだ陸地から離れていないのに大きな魚やきらきらと輝く魚がたくさんいた。

それは太陽の光を通して輝き、その光の道筋は神秘的な空間を彩っている。

珊瑚礁は、まるで幾重にも重なるミルフィーユのように層を成して存在しており、そこから小さな魚が見え隠れしている。

人工的なものが一切加わっていない、まるで魚の楽園のような世界に、俺は思わず目を見開いて輝かせる。


そして俺は浮遊力により強制的に海面から顔を出す。

実に数秒にも満たない間だったと思う。

振り返ると、少し離れた位置からこちらを見やる三人の姿。


「おーいっ!どうだよ海はー?」


ヴィランダさんが手でメガホンを作って声を張る。


なんと言えば良いのか、上手く言葉が出ない。

たださっきまでの胸の高鳴りは、何処か心地良さを残して胸に響いている。


それを言葉にするならば-。


「最っ高です!」


俺はグッと親指を突き返して高く上げた。

三人とも、それが嬉しそうに笑ってくれた。


ハッと見上げれば高く広がる青い空。

どうしてこうも晴れ渡った空は、人々の心を満たしてくれるのだろうか。

潜れば下に広がるのは自然の珊瑚礁の海。

こうも身体全身が満たされているのを感じるのは初めての経験だった。

湧き上がるのなんとも言えない興奮と探究心。今なら何をやったって上手くいくような気がする。


「おっしゃぁあああっ!海に眠るとされる巨人の大剣、探すぞー!」


俺は勢いに任せて海へとまた潜る。

もう巨人の大剣すら簡単に見つかる気しかしない。


「ブブブ⋯⋯ブブブ⋯⋯」


海に潜っている最中、興奮に口から空気が漏れ出していても気にしない。


-さぁ、何処に隠されていたとしても、必ず見つけだしてみせるッ!

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