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第二章 第十七話「突然の訪問」

恋愛相談?をしに二人の元を訪れる天。

話は何故、あの時勇人を疑ったのかになっていく。

「グラ⋯⋯ディウス?」


初めて聞いた単語だった。

いや⋯⋯勇人が一人で盛り上がって話し掛けて来た時に少しだけ耳にした気がする。


「あーその反応。やっぱり知らないよなぁ~」


ヴィランダさんは頭に手を当て、少し安心したように声を漏らした。


「ね?多分本当に知らないって言ったでしょ?」


どうやら私の反応に、二人から放たれていたなんとも言えない雰囲気が消えていく。


「え?え?なんですか?」


狼狽する私を他所に、「いいや。気にしなくていいんだ」とヴィランダさんはにこやかに笑って言う。


「グラディウス⋯⋯勇者以前の”王を護る剣”として選ばれた五人の精鋭の事だよ。ちな私がその一人」


「え、ヴィランダさんが!?」


ヴィランダさんは自身を指さして「そっ」と笑う。

たしか先日、大きなイカの怪物が下に広がる漁港街を襲った時、倒したのはヴィランダさんだった。

彼女は手から何かを放ったと同時に、一瞬でイカの怪物を両断してしまったのだ。その精鋭と言われても納得できる。


「”質量変化”⋯⋯それが私の扱える魔力」


そう言いつつ手にしたジョッキをボンッ!と大きくさせてみせる。


「ま、触れていないから中の水分には影響しないんだけどな」


説明通り、半分くらい入っていたお酒は増えずに、底に浅く広がっているだけ。


「カロックノリアを倒した時も、私はこれを投げただけなんだぁ」


取り出すのはカミソリのような刃。それはブーメランのように飛ばしやすく、投げやすく改良してあった。


「改良したのは私だよー!」


にっこにこな表情を浮かべるマフィンさんは、私を指さして告げる。


「-そして、ユウト君が手にしていたジェットソードは私の父が造った物なんだ」


マフィンさんは「フフンッ」と自慢げに鼻を鳴らす。


「”簡易武具(インスタントウェポン)”は、私の魔力とマフィンの父-”ヘパイド・エルミナ”によって造った合作だ。王に忠誠を誓った特別品だし、二本も同じ物は私とヘパイド以外では造れない」


そこでようやく、最初に勇人を疑ったのか分かった。


「つまり、あの武器は勇人が盗んだって言いたいんですか?」


「最初はそう思ったんだけど、そもそも仕様がね」


ヴィランダさんは近くに立てかけてあった手頃な剣を手に取り柄頭を指さした。


「ここに王から賜った紋章が付いているんだけど、それは所有者以外は扱えなくなっている。でもアサガナから逃げ出した時、飛んで逃げたって言ったよな?だからおかしいんだよなぁ⋯⋯本人以外はその武器の魔力を引き出す事は出来ない筈なんだ」


話を聞いていると、私からもいい?とマフィンさんが間に入る。


「もう一つ不思議なのは武器とユウト君、どちらからも魔力を感じない事。この世界に産まれた者なら魔力を使える使えないに限らず魔力を保有している。でもユウト君からは一切の魔力を感じないんだよ」


それについては私たちがこの世界の住民ではない事が理由だろう。


「ユウト君からはともかく、武器からも魔力を感じないとなると意味不明なんだよなぁ⋯⋯」


ヴィランダさんはお手上げと両手を首に回して背もたれに体重を預ける。


「ジェットソード。グリム襲撃の時に慌てて掴んだのがそれだった」


「だよなぁ⋯⋯」


私の発言にヴィランダさんは顔を曇らせて、机の上に両手を組む。


「あいつは武器を落とすようなヘマはしない。サンライズ・アクアシアとはそういう奴なんだ」


ヴィランダさんは机を見つめて願うようにそう呟く。

その目は机の上と言うよりも、はるか先を見ているようだった。


「だから、奴は-」


「あーはいはいっ!それ以上は考え込まない!で、で!?ぶっちゃけ仲直りしたくて来たんでしょ!?」


ヴィランダさんにマフィンさんが後ろから抱きついて話題を逸らす。


「ええッ!?」


突然のパスに動揺して声がうわずってしまう。

それはマフィンさんから見て図星と捉えられてしまった。


「わかるよ?なんだが気まずいもんね!」


「確かに気まずくはありますけど⋯⋯別に仲直りなんて」


そもそも。勇人が私以外の人でも良かったなんて言うのが悪い。何それ。誰でも良かったってこと?


「聞いた話、なんだがミカちゃんが少しだけ意識しているような気がするんだよね~」


「どの辺りがです?」


「だって、今まで売り言葉に買い言葉でそんなやり取りしててもどうも思わなかったんでしょ?でもその時、その言葉だけ反応するのはどーしてかなぁ?」


私の眉間がピクりと反射的に動いたのを感じる。

今の今まで、この世界に来て一週間くらい言い合いなんて沢山してきた。

でもどうしてあの時の言葉だけは引っかかってしまったのか。

何か心を鋭いもので引っ掻かれたような、そんな痛みがあの時はあった。


「⋯⋯分からない」


いくら考えても、あの言葉だけ反応した理由が見つからない。

視線を感じてハッと顔を上げると、マフィンさんといつの間にか復帰したヴィランダさんが二人してニマニマしていた。


「⋯⋯なんです」


「いやぁ~⋯⋯可愛らしいなぁって♪」


「この歳になってくると、女の子の悩み聴けるのは新鮮で初々しくて耳福だねぇ」


「バカにしてません?」


「「してないしてない」」


私の頬は少しずつ熱を帯びていくのを感じる。

それを見て二人はさらに顔を蕩けさせる。

これ以上話しても、なんだが二人の養分にされるだけで終わりそう。

とりあえず帰ろうと立ち上がろうとした時、扉を荒々しくノックする音で私は驚き固まる。


「入れっ!」


ヴィランダさんの声に扉が開け放たれ、飛び込んで来た人物。

そこに立っていたのは一人の男性。

息も絶え絶えに、急いでここにやって来たのが分かる。


「あ、もう怪我治ったんだねぇ」


「あ、コラ」


咎めるヴィランダさんの声を遮り、男はまだ呼吸も整わないまま声を上げる。


「街アサガナから民兵隊がやって来ました」


それを聞くとヴィランダさんの顔が歪み、「チッ、またかよ」と舌打ちすると手を払う。


「もう奴らと組むつもりは無いんだ。いつも通り追い払ってくれ」


「しかし⋯⋯」


「どうせ今回の”グリム襲撃”の件もこっちのせいとか思ってるんだろ?話すことはない」


それでも引き下がろうとしない男。じーっと見つめる先に居るのは、さっきまでとは違い、不機嫌そうに顔をしかめるヴィランダさん。


「くどいぞ」


男は何かを言いにくそうに口をまごつかせるも、ようやくその重い口を開いた。


「サンライズ・アクアシアと名乗る者も、一緒です」


「⋯⋯⋯⋯は?」

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