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第三章 第七話「先ずは腹ごしらえ」

サークルの中から見える景色に勇人は感動する。

奥に見えるのは泊まった宿町ルームスト!その隣を見渡せばシークリフに、森を越えた奥には街アサガナ!


更に上から迫る王都に興奮、空の王都を支えているのは五つの推進円柱だと知らされる。

高度な技術、そして三種族の知恵が使われているのだと知る。

王都に入ると、輝かしい世界が待っていた。


まず初めに待ち受けていたのは、真っ直ぐに大きく伸びた本通りで、目の前にアサガナに負けない程の人で賑わっているが、大勢の人をものともしない広さを誇っていた。

その下には大理石のように綺麗な石が敷き詰められており、見上げると両端には背の高い建物が待ち構えていた。

そして王都に馴染むように水が至る所に通っており、その奥に宮殿のような白を基調とした宮殿のような建物が鎮座しているのが見えた。


俺はアサガナやシークリフと違って、一段と金の掛かったような高級感漂う王都に空いた口が塞がらなかった。


「どうだい王都は?魔王率いる魔物との籠城戦に備えて完全要塞にする予定だったから、水は海から循環システムを各家に配置、農作物も陽光に強く早く育つ作物を採用。防具はもちろん武器だって専用の鍛冶師が何人も常駐。物資が途切れる事はない!」


サンライズさんは声高らからに言い放つ。

どうやらこの国が誇らしくて声が大きい。

ローブを被ってたとしてもバレそう。


「じゃあアサガナ襲撃も痛くなかったのか?」


ライドの問いにサンライズさんはピタッと止まった。


「⋯いや、アサガナが襲われたのは大きかったよ。なんせあそこからしか出ていない武器や食料だってあるからね⋯⋯まっ、その話はここでは」


そう言ってサンライズさんは自我の押し殺すようにコホンと咳き込むと、大きく手を広げた。


「どうだいユウト君?さっきも言ったように五大推進円柱が空に浮かぶ事を可能にし、そして五本全てに監視をつけている。完全無欠なのさ、」


サンライズさんはやっぱり誇らしげに語る。それだけの苦労もあっただろうに。


「でも監視だって万全じゃないのでは?」


「そりゃもちろん。人だからそうだろうね。でも王都には不可視のバリアを張り巡らせているから、サークルか後ろの門をくぐる事以外に魔物はおろか虫一匹すら入ることは出来ない」


「そういう事だ。サークルをくぐるか後ろの森に繋がるゲートをくぐって来るしか突破口はない」


「なんでお前が偉そうなんだよ」


「俺が王国側だからだよ」


ズイッと出てきたライドを押しのけて、俺はふと気になった地面に触れる。


下の地面。大理石のように白く輝いており、流れる水とマッチしてとても綺麗だ。

ただ触れてみた感触としては、何やら細々としたざらっとした感じが伝わる。

まるでわざとそうしてあるみたいに。


「もしや本当の大理石とでも思ったかな?」


隣のサンライズさんは合わせるようにしゃがんだ。


「これはね、透明に見える塗料を薄ーく塗っているだけなんだ。それもちょっと荒目に作ってね」


それはなぜか?

顔に浮かんでいたのだろう、答えはすぐに返ってくる。


「下に敷いてあるのは-”魔封石”。文字通り魔力を使用不可とするものだ」


そういえば下から見上げた時は黒っぽい感じだったのに、いざ王都に来ると真っ白な建物と水のコンビネーションが彩る世界となっていた。


「まぁ景観さ。表向きは」


そう言って周りを見渡してみせる。


「ここには何万人と民が住んでいる。せめてここの人達だけでも安全を確保出来なければ王子としての名が立たない」


サンライズさんは熱を持って語り始める。


「だから魔物が寄りつかないようにする為に魔封石で構成された王都なんだ。前の魔族くらいじゃなければ張り付くことすらままならないだろう。だが、あくまで魔力を封印するだけであり、魔法攻撃によって破壊は可能だから監視がいるのさ」


つまりは何かあった時でも二十三十に対応できるようにしているとの事だ。


「でも、この地面が魔封石で出来ているなら、サンライズさんもいま魔力が使えないんじゃ?」


「そんな馬鹿な事はしないさ。使えないのはあくまで”直接触れている時”のみだよ」


なるほど。よく考えればそうか。

靴とか貫通して効果を発揮するなんてゲームくらいだ。


なら一つの疑問が浮かんできた。


「ならあんまり魔封石を敷き詰める意味が無いんじゃないですか?」


そんな俺の問いにチッチッチッ、と出しゃばってくるのはライド。


「甘いぜユウト。さっきサンライズさんは「表向きは」って言っただろ?ここ王都アクアシアは極悪人を収容する地下牢獄があるわけよ。大抵は魔力も持った連中だ、そんな奴らを安全に運ぶとなると石が活躍するってわけだな」


コンコンとライドは示すように地面を打ち鳴らす。


「魔封石はその辺の石の数倍の硬度があり、有難い事アクアシア大陸付近の海域ではたくさん取れた。当時はディーヴァと取引をして海底から取ってきてもらい、人間側は情報や魔物と戦う武具を与えた」


ライドの話に「そう」とサンライズさんが再び入ってくる。


「魔法が蔓延り主となっているこの世界で、囚人にのみ魔法禁止区域となるのは使い勝手がいい。囚人達のほとんどは王都以外で犯罪をした人が多く、王都での取り扱いが主だったから魔封石がどんなものかを知らない場合が多い。聞いていたとしても黒っぽいとかね。そんな相手に意表を突かせることが出来ると考えれば、やっぱりこの透明な色合いがよく馴染むし、景観とも合うから良いんだよ」


サンライズさんが言い終えると、ちょうど何処かで鐘の音が聴こえた。


「お、もう昼の時間か。急がなくてはならないな」


サンライズさんは「ライド」とさっきまでの柔らかな雰囲気はなくなり、重く圧のある声となる。


「はっ!」


「王都を案内してあげなさい。それと城の中の宿舎にも連絡してあるから、今日はそこに二人泊まりなさい」


「わかりました」


「あと-」とサンライズさんはこちらを見やる。


「そんなに心配しなくていい。ミカちゃんも同じ宿舎だ。夜になったらそこで会える」


そう言ってニコッと笑うと、「あとは頼む」と言い残して真っ直ぐに伸びた大通りを走り去ってしまった。


残されたのは俺とライドの二人。


「⋯⋯で、どうするよ?」


ライドは「ニシシ」と悪戯っぽく笑う。


「色々と見てみたいけど、多分天と会っちまうしなぁ」


さっきの件があり、ちょっとだけ気まづい。


「んー、まだ飯食ってから早いけど-」


と言った所で二人の腹の虫が鳴る。

互いに見合せて目指す場所は決まった。


「「-飯にするか」」

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